|
写真1 「LMZパワー・モジュール」の評価基板
中央にあるのがLMZパワー・モジュール。
|
ナショナル セミコンダクター ジャパン(以下、ナショナル社)は2010年1月、同社のDC-DCコンバータICファミリ「SIMPLE SWITCHER」の新製品として、インダクタも1つのパッケージに収容したモジュール製品シリーズ「LMZパワー・モジュール」を発表した(写真1)。表1に示した3製品がすでに出荷されている。これら以外に、最大出力電流(負荷電流)などの仕様が異なる6品種もラインアップに加わる予定である。用途としては、医療機器、放送用ビデオ機器、通信機器などで用いられるFPGA、マイクロプロセッサ、DSPなどの電源供給を想定している。
SIMPLE SWITCHERの従来品は、DC-DCコントローラとパワーMOSFETを1パッケージに収容することで、電源回路の設計を容易化できることを“売り”としていた。LMZパワー・モジュールは、インダクタをも収容したことにより、さらにそれを推し進めたものとなっている。パッケージは外形寸法が10.16mm×13.77mm×4.57mmの7端子TO-PMODで、標準的に用いられているTO-263に近い形状となっている。米National Semiconductor社パフォーマンス・パワー・プロダクト・ライン ビジネス・ユニット・リーダーのAlex Chin氏(写真2)によれば、「十分な特性を得ながら小型化を実現するため、特にパッケージングの工夫が必要となり、製品化までには2年を要した」という。同モジュールに用いているインダクタは外部調達している。インダクタの値は明らかにしていないが、「μHのオーダー」(Chin氏)だという。また、モジュールの内部構造の詳細についても、特許にかかわる部分とのことで、明らかにしていない。
|
写真2 National Semiconductor社のAlex Chin氏
|
LMZパワー・モジュールの性能面の特徴の1つは、EMI(電磁干渉)耐性が高いことである。いずれの製品も、放射妨害波規格のEN55022(CISPR22) Class Bを満たしている。このような性能が得られた理由として、Chin氏は「スイッチングノードからインダクタまでの配線の長さを短くすることや、シールド付きのインダクタを採用していること」などを挙げた。また、パッケージ裏面に銅パッドを設けたことで、放熱特性に優れることも特徴の1つである。「動作時のパッケージ表面温度は、他社モジュール製品に比べて約10℃低い」(同氏)という。
スイッチング周波数は最大1MHzで、外付け抵抗の値により変更できる。ソフトスタート機能、トラッキング機能の利用も可能となっている。
ツールによる設計支援
|
画面1 「Power Architect」の実行画面
入力した仕様データに応じて、画面右側に表示されているような電源回路のアーキテクチャが何通りも示される。加えて、それぞれのアーキテクチャや使用する部品などに応じて、実装面積、効率、部品コストがどのようになるかを把握することもできる。 |
ナショナル社は、同社が無償提供しているオンライン設計支援ツール「WEBENCH」の機能拡張ツール
「WEBENCH Power Architect」も併せて発表した。同ツールが提供するのは、電源回路のアーキテクチャを検討するための機能である。これを利用することにより、機器内で用いられる複数種の供給電圧、複数種の負荷電流をどのような構成で実現するかをツール上で検討し、最適化を図ることができる(画面1)。同ツールもすでにLMZパワー・モジュールをサポートしており、「LMZパワー・モジュールと新ツールにより、電源設計の容易化を促進することができる」(Chin氏)という。
Power Architectでは、まず機器において必要となる電源の仕様を入力画面で設定する。すなわち、大本になる電源の電圧、必要になる各種電圧と負荷電流の値などの情報を入力していく。それにより、考えられる電源回路のアーキテクチャの例をいくつか提示してくれる。また、アーキテクチャ上で用いる電源IC(ナショナル社の製品のみが対象)、周辺部品(110社、2万1000種をサポート)を選択すれば、電気的特性や熱特性のシミュレーションが行える。さらに大きな特徴として、候補となるアーキテクチャごとに、実装面積、効率、コストを指標として、どのアーキテクチャ、どの製品を選択すべきかを検討できるようになっている。設計が完了したら、WEBENCHの既存機能である「Build It!」により、部品一式を網羅したプロトタイプキットを発注することも可能である。Chin氏は「Power Architectは、電源回路設計の初心者にとっても、熟練者にとっても有用なツールだ」と説明している。
(飴本 健)
|
表1 新製品の基本仕様
|