写真1 14ビットの「AD9251」(右)と16ビットの「AD9268」(左)
米Analog Devices社(以下、ADI)は2009年4月、高速/低消費電力を特徴とするデュアルチャンネルA-Dコンバータを5ファミリ発表した。分解能が10ビットの「AD9204」、12ビットの「AD9231」、14ビットの「AD9251」と「AD9258」、16ビットの「AD9268」である(写真1)。各ファミリにはサンプリングレートが20メガサンプル/秒(MSPS)~125MSPSの範囲の3~4品種が用意されており、5ファミリで計18品種となる(表1)。パッケージは、外形寸法が9mm×9mmのLFCSP。全ファミリともすでにサンプル出荷を開始している。量産出荷は、16ビットのAD9268と14ビットのAD9251/AD9258が2009年5月から、12ビットのAD9231と10ビットのAD9204が同年6月からとなっている。通信システムやX線を用いた画像処理用機器、携帯型の測定機器といった用途に向ける。
ADI社の高速(1MSPS以上)A-Dコンバータの消費電力は、過去10年間で1/10以下にまで低減している。同社によると、「製造プロセスをバイポーラからCMOSに変更し、プロセスの微細化に伴って電源電圧を下げたことが主な理由」だという。今回発表した新ファミリも、消費電力が少ないことを特徴としている。以下に、例として16ビットのAD9268と14ビットのAD9251を取り上げる。
16ビットのAD9268では、0.18μmのプロセスを採用して電源電圧を1.8Vまで下げたことと、各回路における電流値のバランスを最適化したことで、低消費電力化を図ったという。これにより、AD9268の消費電力は、1チャンネル当たり376mW(125MSPS時)と、他社製品に比べて約半分に抑えられている。また、スイッチングノイズと寄生容量の影響を抑える独自技術を盛り込んだサンプル‐ホールド(S/H)回路を搭載しており、入力周波数が250MHzまでの範囲で優れたS/N比(信号対雑音比)も維持できるよう設計されている。この特徴から、いわゆるアンダーサンプリング(サンプリング周波数以上の入力信号のA-D変換)での利用も可能だという。70MHz動作時におけるSFDR(スプリアスフリーダイナミックレンジ)は88dB、S/N比は78.3dBとなっている。SFDRについては、オン/オフ制御が可能なディザー機能を内蔵することで改善を図っている。さらに、出力データのフォーマット変更や、テストデータの出力など、さまざまな機能をSPIを介して設定できるようになっている。デジタルデータの出力方式は、1.8VのCMOS/LVDSのうち、いずれかを選択できる。なお、同ファミリは14ビットファミリのAD9258と端子互換性を持つため、16ビットから14ビットへの移行も容易に行える。
14ビットのAD9251は、1チャンネル当たり86mW(80MSPS時)という消費電力を実現している。これは、他社の14ビットA-Dコンバータに比べて約60%低い値だという。また、AD9268と同様の手法により、200MHzまでの周波数範囲にわたって優れたS/N比とSFDRを維持しているという。70MHz動作時におけるSFDRは85dB、S/N比は73.5dB。このファミリもSPIで機能を設定/選択できる。AD9251も電源電圧は1.8Vだが、デジタル部分のみ3.3Vを給電することで、1.8VのCMOS出力のほか、3.3VのCMOS出力も利用できるようになっている。さらに、10ビットのAD9204と12ビットのAD9231と端子互換性を持っているため、10/12/14ビット間の移行をスムーズに行える。
ADI社は、各A-Dコンバータ製品に対応した設計/評価用ツールも用意している。具体的には、各製品のビヘイビアモデルを利用して、ユーザーの使用条件での特性評価が行える「ADIsimADC」というウェブベースのシミュレーションツールなどがある。
(村尾 麻悠子)