写真1 ソニーのバイオ電池のデモ
ソニーは2009年2月、『国際水素・燃料電池展』(2009年2月25日~2月27日)において、体積出力密度を2倍に向上した「バイオ電池」を展示した。2007年8月の発表時における体積出力密度は1.25mW/cm3だったが、今回は2.5mW/cm3となっている。展示では、電池セルにコーラを注いで発電し、小型のファンを回すというデモンストレーションを行った(写真1)。
バイオ電池とは、ぶどう糖を酵素で分解して活動エネルギーを取り出す生物の仕組みを応用し、その活動エネルギーの代わりに電気エネルギーを取り出す電池のことである。水素やメタノールの代わりに、ぶどう糖を含む液体を燃料とする燃料電池であると考えるとわかりやすい。
電池セル内での反応プロセスは以下のとおりである。まず、負極に固定化した複合酵素(グルコースデヒドロナーゼなど)によって、ぶどう糖がグルコノラクトンに分解される際に、水素イオンと電子が生成される。この水素イオンは、電解質を通して正極に移動し、正極上に固定化した酵素により、空気中の酸素と還元反応を起こして水を生成する。この還元反応を起こすには、外部から電子を取り込む必要がある。そこで、この電池セルの負極と正極の間を導線で接続しておけば、負極で生成した電子を正極での還元反応のために移動させることができる。このとき、導線内には電流が流れることになる。
今回展示したバイオ電池では、2007年8月の発表されたものと比べて、酵素反応の起きる部分と電極との間で電子を移動させる電子伝達物質と、水素イオンが移動する電解質の効率を改善している。その結果、体積出力密度が2倍になったことに加え、面積出力密度については、1.5mW/cm2から5mW/cm2にまで向上した。
このバイオ電池の特徴は、高い出力電圧を得られる点にある。バイオ電池と同様に液体を燃料とする直接メタノール型燃料電池(DMFC)では、1つのセルで0.3V程度の出力電圧を得ることができるが、バイオ電池の出力電圧は0.5V~0.6Vに達するという。その一方で、出力電流が小さいことが最大の開発課題となっている。DMFCの出力電流が約200mA/cm2であるのに対して、バイオ電池のそれは10mA/cm2に過ぎない。
このバイオ電池は、安全性が高いことも特徴とする。「ぶどう糖、電極、電子伝達物質、酵素、電解質、セパレータなど、バイオ電池を構成する素材はすべて中性であり、たとえ電池セルが壊れたり、ぶどう糖液が漏れたりしても危険はまったくない」(ソニー)という。動作温度については、50~60℃の周辺温度に対応している。これは、最も温度変化に弱い酵素について、ソニー自身が遺伝子レベルから開発することにより耐久性を高めた結果だ。また、約80℃の環境に数時間置いた後でも動作することを確認している。
(朴 尚洙)