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DCカット用コンデンサが不要なヘッドホン用アンプ

[issued: 2007年2月19日]
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 日本テキサス・インスツルメンツ(以下、TI)は2007年2月、ステレオヘッドホン用アンプ「TPA6130A2」の量産出荷を開始した。同製品は、ヘッドホンで通常用いられるDCカット用コンデンサを不要とするTIの「DirectPath」技術を採用した製品で、同社従来品「TPA4411」にステレオオーディオ信号の差動入力回路と64ステップのボリュームコントロール回路を追加したものである。TPA4411と比較して、消費電流の削減と音質の向上も図られている。主に、消費電流/回路面積の削減と音質の向上への要求が高い携帯電話機や携帯型オーディオプレーヤ/メディアプレーヤなどの用途に向ける。
 主な仕様は、最小負荷インピーダンスが16Ω、信号対雑音比が98dB、全高調波歪率(THD+N)が0.0055%(1kHz正弦波を35mWで出力したとき)、外部インターフェースがI2C、動作電源電圧が2.5V~5.5V、動作温度が-40~125℃である。パッケージは2.0mm角の20端子 QFNと4.0mm角の16端子WCSPが用意されており、1000個購入時の単価は1.55米ドル。
 TPA6130A2が採用しているDirectPath技術は、ヘッドホン用アンプがステレオミニプラグなどを介してヘッドホンと接続する際に用いられるDCカット用コンデンサを不要にするものである。一般のヘッドホン用アンプは単一電源であるため、その電源とグラウンドの中間の電位にバイアスされた電気信号によってヘッドホン出力を行う。従って、直流電流を流してヘッドホンを破壊しないためにDCカット用コンデンサが必要となる。しかし、ヘッドホンを駆動する信号に直列に挿入されたDCカット用コンデンサには、音声特性と機器の大きさにかかわる2つの問題がある。音声特性に関しては、ヘッドホンとDC カット用コンデンサがハイパスフィルタとして働くため、低域の音声が減衰してしまう。機器の大きさに関する問題は、このハイパスフィルタのカットオフ周波数を低くするには33μF~330μF程度の高容量のDCカット用コンデンサが必要なり、ヘッドホン用アンプを組み込む携帯型機器の内部に広い空間と実装面積を要してしまうことだ。
 TIのDirectPath技術は、ヘッドホンとヘッドホン用アンプを直接接続することでこれらの問題を解決する技術である。その仕組みは、 TPA6130A2が備えるチャージポンプによってデバイス内部に負電源を発生させ、それを用いて0Vを中心として振幅する信号を出力するというものだ。これによりDCカット用コンデンサが不要となり、低域の音声を減衰させずに忠実に再現することが可能になる。なお、チャージポンプ用に1個のコンデンサを必要とするが、その容量は1μFであり、DCカット用コンデンサと比較して非常に小さい。
 アンプとヘッドホンがDCカット用コンデンサなしで接続可能であるということは、アンプの端子がステレオミニプラグなどを介してで外部にさらされることを意味する。その場合に問題になるのはESD(electro static discharge:静電気放電)による破壊だが、その対策としてTPA6130A2の出力端子は8kV(ヒューマンボディモデル)の静電耐圧を備えている。
 TPA6130A2には、DirectPath技術のほかに以下に挙げるような特徴がある。
●高い雑音耐性:TPA61302Aは、アナログ音声の入力に差動信号入力を採用している。それにより、PSRR(power supply rejection ratio:電源電圧変動除去比)が、従来品(TPA4411)の80dBから109dBに向上している
●ポップノイズの低減
 一般に、オーディオアンプでは、電源投入時やスタンバイ動作からの復帰時にヘッドホン出力のオフセット電圧に起因するポップノイズが発生する。 TPA61302Aは、トリミングに対応したプロセス技術(LBC7)を採用することにより、チップ内部の抵抗値を調整することでオフセット電圧を低く抑えている。具体的には、TPA4411の8000μVから150μVと約1/50に削減している。これにより、ポップノイズを可聴レベル以下に抑えた。ポップノイズの低減のために必要なミュート回路が不要なので、回路面積を削減できるというメリットもある。
●ボリュームコントロール
 例えば、ヘッドホンアンプの前段のオーディオコーデックでボリュームを下げた場合、オーディオコーデックとヘッドホンアンプとの間の経路で信号の振幅が小さくなり信号対雑音比(S/N比)が低下する。TPA61302Aは64ステップのボリュームコントロールを備えるため、ヘッドホンの直前で出力レベルの調整を行うことが可能である。従って、同製品に対する入力信号を可能な限り大きくすることによって、システム全体で高いS/N比を得ることが可能だという。
●最大出力電力
 TPA61302Aの最大出力電力は、TPA4411の80mWから約1.7倍の138mWに向上している(インピーダンスが16Ωのヘッドホンを駆動する場合)。これは、出力段のFETのオン抵抗を低下させたことで実現した。
●低い消費電流
 TPA61302Aはプロセスの微細化によって、静止時(ヘッドホン出力が無音)の消費電流、をTPA4411の8mAから1/2の4mAに削減している。

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