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「位置情報は後でわかれば十分」
——デジカメ向けGPSでu-blox社が新発想

[issued: 2009年10月号]

 スイスに本拠を置くu-blox社は、GPS(全地球測位システム)用RF IC/モジュールの分野で高いシェアを持つベンダーである。従来、同社の製品ラインアップは、他社品と同様にGPSを利用して位置情報を即座に取得する「リアルタイムGPS」を実現するものであった。その同社が、「Capture&Process(以下、C&P)」と呼ぶ新たな製品/サービスの提供に乗り出した。

 u-blox社がターゲットとするのは、普及帯のデジタルカメラやカメラ付き携帯電話におけるジオタギング(GeoTagging:タグによる位置情報の埋め込み)の用途である。これは、エンドユーザーが写真を撮影した際、その写真がどこで撮影されたものであるかを記録しておく機能だ。一般的に、この用途では、GPS衛星との通信によって、デジタルカメラなどの機器上でリアルタイムに位置情報の算出(測位)が行われる。その結果として、各機器のメモリーに写真データと1対1で関連付けられた位置情報が蓄積される。u-blox社英国法人のプロダクトマネジャを務めるStuart Butterfield氏は、「この方法には、位置情報の取得に30秒から最大では数分間の時間を要するという大きな欠点がある」と指摘する。30秒の内訳は、GPS衛星からのデータ受信に18秒、位置情報の算出に12秒といった具合である。この方式のRF ICやモジュールを提供するベンダーは、エンドユーザーにとっての使い勝手の面から、この時間短縮を競っている状況にある。また、測位に多くの時間を要するということは、それに伴う電力消費量が増えるということを意味する。このことも、デジタルカメラや携帯電話機のような電池駆動の機器では大きな問題になる。

 u-blox社のC&Pは、リアルタイムGPSとはまったく異なる発想でこの課題を解決しようというものだ。Butterfield氏は、「従来のリアルタイムGPSは『今、どこにいるのか』を知るための技術であった。それに対し、われわれのC&Pは、『そのとき、私はどこにいたのか(Where was I?)』という問いに答えるための技術だ」と説明する。


図1 「Capture&Process」の仕組み
 C&Pは、図1に示す4つの要素で構成される。すなわち、GPS衛星と、デジタルカメラなどに実装(ないしはアダプタとして付加)されるGPS受信機、エンドユーザーのパソコンにインストールするクライアント側ソフトウエア、パソコンからインターネット経由で接続して利用するサーバー側ソフトウエアサービスである。

 C&Pの処理の流れは次のようになる。まず、ユーザーが出先でデジタルカメラなどのホスト機器で写真を撮影したら、GPS受信機によってGPS衛星からの情報取得が行われる。この点はリアルタイムGPSと同様である。ただし、このとき取得するのは、GPS衛星のPRN番号とGPS衛星からホスト機器までの擬似距離の情報のみだ。この情報と写真データ、撮影した時間の情報が関連付けられ、ホスト機器のメモリーに基本データとして蓄積される。ユーザーは出先から戻ったら、パソコン上のクライアント側ソフトウエアを使って、ホスト機器のメモリーに格納された基本データを取得する。その上で、インターネット経由でサーバー側ソフトウエアサービスにアクセスする。このサービスは、各GPS衛星の各時間における詳細情報をダウンロード提供するものである。その詳細情報と基本データを使って、パソコン上のクライアント側ソフトウエアで位置情報の算出処理を行う。これにより、写真を撮影した場所の情報と写真のデータとを関連付ける仕組みである。

 C&Pの最大の特徴は、GPS衛星からGPS受信機で取得するのがPRN番号と距離の情報だけなので、それにかかる時間をわずか200msに抑えられることである。これであれば、ユーザーは測位処理に伴ってストレスを感じることはない。また、写真を撮影するたびに200msの間、瞬時電流が流れるだけなので、消費電力の問題も回避できる。u-blox社は、この瞬時電流による消費電力のスペックを15mJ〜20mJと規定している。

 なお、このシステムの欠点として、Butterfield氏は「リアルタイムに情報が得られないため、その場で、正しく位置情報が取得できているか否かがわからないこと、インターネットにアクセスできる環境が必要なこと」を挙げている。

 u-blox社が顧客に供給するのは、GPS受信機用のRF IC、クライアント側ソフトウエア用の測位エンジン、サーバー側ソフトウエアサービスへのアクセスに用いるキー情報である。サーバー側のソフトウエアサービスもu-blox社が用意している。GPS受信機は、RF ICのほかに、アンテナ、マイコン、メモリー程度で構成でき、ベースバンドICなどは必要としない。価格については、量産数量にもよるが、一般的なリアルタイムGPSにかかるコストである8〜10米ドルの半分以下に抑えるとしている。

 C&Pは、すでにドイツJOBO社などが量産品に採用している。u-blox社日本法人のユーブロックス ジャパンでカントリーマネージャーを務める仲哲周氏は、「リアルタイムGPSでは、測位にかかる時間や消費電力の面で、スペック競争が行われており、エンドユーザーもそのスペックを気にしている。C&Pは土俵が異なる技術であり、その競争に加わる必要がない。エンドユーザーに対して『GPSを利用していることを感じさせない』売り方も有効だと考えている」と述べた。

(飴本 健)

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