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車載半導体/電子部品の開発目標は、「コスト低減」にシフト

[issued: 2009年7月号]

 売上高の減少に悩む自動車業界は、2009年度の研究開発への投資を大きく削減した。しかし、投資を減らしていない分野が2つ存在する。1つは、販売が好調なハイブリッド車に代表される「エコカー」など、燃費を向上する技術への投資である。もう1つが、自動車や自動車部品の開発コストを低減できる技術や製品に対する投資だ。そして、半導体/電子部品メーカーも、この動きに対応すべく、主にコスト低減を中心にした提案を強化している。

ドライブレコーダを2万円以下に

図1 ロームの「BU1511KV2」とドライブレコーダの構成例(提供:ローム)
低価格の普及型ドライブレコーダに必要な機能をほぼ1チップに内蔵している。高機能化が必要な場合には、赤色で囲んだ部分の部品を外付けすればよい。

 ロームは2009年5月、低価格なドライブレコーダの開発を可能にする専用IC「BU1511KV2」を発表した。現在、ドライブレコーダは3〜5万円で販売されているが、BU1511KV2を利用することで、価格を2万円以下にすることができる。

 ドライブレコーダとは、急ブレーキ時や急ハンドル時、もしくは自動車に衝撃が加わったときなどに、警告音を発すると同時に、その前後の映像、音声、日時、速度、加速度を、外部カメラと加速度センサーを使って自動的に保存する機器のことである。現在、ドライブレコーダは、主にタクシーなどの事業用自動車に搭載されている。これらの事業用自動車で運用される中で、事故率を低下させるだけでなく、ゆっくり加減速するなどの安全運転を行うことにより、燃費を向上させる効果もあることが確認されている。今後は、一般の乗用車にも普及が進み、市場規模が2008年の約17万台から2014年には85万台まで拡大するという予想もある。

 ドライブレコーダの普及の課題とされるのが、その価格である。ロームによれば、「事故率の低下や省エネ運転を支援する機能があったとしても、3〜5万円では高過ぎる。そこで、ドライブレコーダの普及を推し進められる低価格品の開発を可能にするICとして、BU1511KV2を開発した」という。

 BU1511KV2は、ARM9コアのプロセッサを中心に、ドライブレコーダに必要なカメラ、加速度センサー、GPS(全地球測位システム)、SDカードなどのインターフェース機能を内蔵している。これにより、外付け部品の点数を減らせるので、大幅なコスト削減が可能になる。また、従来はパソコンで扱う必要のあった記録データや分析情報については、ビデオエンコーダを内蔵することにより、テレビなどに直接出力することが可能である(図1)。

 BU1511KV2を採用したドライブレコーダは、2009年夏ごろに発売される見込み。その価格は、「2万円を切るぐらい」(ローム)だという。今後、販売台数が増えれば、「1万円台前半まで」(同社)価格が下がる可能性もある。

 また、同社は、自動車の損害保険会社に対して、被保険者にドライブレコーダの搭載をあっせんすることについて協力を求めている。ロームは、「損害保険会社にとっても、ドライブレコーダが普及して交通事故が減れば、国内で3兆円以上と言われる保険金の支払いを減らすことができる。また、ドライブレコーダが広く認知されれば、同レコーダを搭載する自動車の保険料の低減について、国からの認可も下りるようになる」と説明する。

カーナビの低価格化に対応

写真1 「TTM15J」と従来品のサイズ比較
右がTTM15Jで、左が2パッケージ構成の従来 品。TTM15Jのサイズは36.7mm×54.0mm ×7.5mmで、実装時の面積は従来比で約55% 削減されている。

 ほんの数年前までは、20〜30万円が当たり前だった組み込み型のカーナビゲーションシステム(以下、カーナビ)。しかし、2006年ごろから登場した低価格のナビゲーション機器であるPND(Personal Navigation Device)の影響もあり、組み込み型カーナビにも低価格化が求められている。

 ルネサス テクノロジが、こうした低価格の組み込み型カーナビ向けのプロセッサとして、2008年後半から展開しているのが「SH-Navi Jシリーズ」である。SH-Navi Jシリーズの基本性能は、プロセッサコアにSH-4Aを採用するなど、2004年に発売した「SH-Navi1」とほぼ同等である。ただし、外付けのメモリーのモジュール数について、SH-Navi1のDDR SDRAM(Double Data Rate Synchronous DRAM)×4から、SH-Navi JシリーズではDDR2 SDRAM×1に削減した。その一方で、SH-Navi1にはなかった、USB 2.0やSDカードのインターフェースを備える。価格についても、サンプル価格で比較すると、SH-Navi1が8000円、「SH-Navi J1」が5000円となっている。ルネサス テクノロジは、「2005年ごろ、SH-Navi1を採用した最先端のカーナビの価格は20〜30万円。これに対して、SH-Navi Jシリーズは、外付けメモリーのコストを削減するとともに、SH-Naviシリーズのソフトウエア資産も流用できることから、10万円前後の低価格の組み込み型カーナビに採用されるだろう」としている。

 最先端のカーナビの付加価値として認知されているのが、フルセグの地上デジタルテレビ放送を受信できる機能である。パナソニック エレクトロニックデバイス(以下、PED)は2009年3月、車載向け地上デジタルテレビ放送受信用フロントエンドの最新製品「TTM15J」を発表した(写真1)。

 TTM15Jは、アンテナが4本の4ダイバーシティ受信システムに対応するフロントエンドモジュールである。このタイプのシステムは、移動体である自動車において、高い感度で地上デジタルテレビ放送を受信するために需要が拡大している。従来は、4ダイバーシティに対応するフロントエンドは2パッケージで構成されていたが、TTM15Jは1パッケージにまとめられている。1パッケージにすることで、実装時の面積が55%以上削減されており、最終製品の小型化や薄型化が可能になる。また、消費電力も15%減となる2.4Wに低減している。TTM15Jを採用したカーナビは、2009年中に発売される予定である。

 PEDは、TTM15Jの技術を多方面に展開することで、車載向け地上デジタルテレビ放送受信用フロントエンドのコスト低減を目指している。1つの例は、車載用途以外でのアプリケーション展開による生産規模の拡大である。例えば、持ち運び可能なポータブルタイプの地上デジタル放送対応のテレビなどである。一方、製品そのもののコスト削減としては、アンテナの本数を減らすことや、FM放送波、ETCなどに用いられるDSRC(Dedicated Short Range Communication)の受信が可能な製品の開発を検討している。PEDは「地上デジタルテレビ放送と同じくらいの周波数帯に対応する放送や通信も受信できるフロントエンドを開発できれば、カーナビのコスト低減に大きく貢献できるだろう」としている。

(朴 尚洙)

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