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トヨタの重松氏が標榜する「新モビリティ」とは?
──『国際カーエレクトロニクス技術展』から

[issued: 2009年3月号]


写真1 トヨタ常務役員の重松崇氏

 カーレクトロニクス関連技術の専門展示会として、『第1回 国際カーエレクトロニクス技術展』が、2009年1月28日から30日まで東京ビッグサイトで開催された。現在、カーエレクトロニクスの発展を担う自動車/電機業界は、2008年後半から始まった急激な景気後退により、これまでにない厳しい事業環境に置かれている。このような状況の中で開催された同展示会だが、カーエレクトロニクス業界の将来を支えるであろう、新たな技術やビジョンが数多く示された。ここでは、同展示会の専門技術セミナーにおいて、トヨタ自動車(以下、トヨタ)で常務役員を務める重松崇氏(写真1)が行った基調講演『持続可能な自動車産業を目指して~パワーエレキと情報通信技術の展望』についてリポートする。

新たな自動車開発のテーマ

 重松氏は、トヨタにおけるハードウエア/ソフトウエアを含めたカーエレクトロニクス関連技術の開発トップとして知られている。講演の中で、同氏は次代の自動車産業が目指すべきものとして、「新モビリティの創出」を挙げた。

 重松氏の主張は、「世界の自動車市場が急速に減退したことを機に、自動車産業のあり方についてさまざまな議論が行われている。私自身は、自動車開発のテーマとして常にうたわれてきた『環境』、『安全』、『快適』の3つに、自動車産業の次の100年を支え得る『新モビリティ』の創造も加える必要があると考えている。ここで言う新モビリティとは、環境負荷を持たない(環境に対して悪影響を与えない)、人、モノの自由な移動形態のことを指す。そして、そこで中核となる技術は、車々間、路車間などのインフラ協調を実現するITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)であろう」というものだ。

 この新モビリティの具現化策として、重松氏は2つの革新の方向性を提示した。1つは、移動体およびエネルギー変換技術の革新である。自動車の小型/軽量化、自動運転や自動隊列走行によりエネルギー消費の少ない走行を実現しつつ、プラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車などで利用されている、内燃機関に替わる駆動源によりエネルギー変換効率も高めようということだ。

 もう1つは、街づくりと一体となった都市交通の革新である。これについては、まず都市や道路のインフラ整備とともにITSの普及を進める。そして、自動車を利用する人に対し、道路の渋滞状況などに応じて、車を利用する時間帯や目的地までの経路の変更を促し、場合によっては自動車以外の交通手段を推奨するなどして円滑な交通流を図るTDM(Transportation Demand Management:交通需要マネジメント)活動を促進するというものだ。

 重松氏は、乗員1人当たりのエネルギー消費率と平均車速から求める「モビリティ性能係数」を指標として、「東京でカローラに1名で乗車して運転する場合を1とすると、新モビリティのモビリティ性能係数は7にまで向上する必要がある」と考えているという。「しかし、それはただ1つの手段によって実現するということではない。例えば、郊外を家族で移動する場合にはハイブリッドのファミリカーを使い、市街を1人で移動する場合には1人乗りのコミュータカー(通勤用自動車)を使う。もちろん、電車やバスなども利用することになる。こうした多様な手段によって実現される、最適かつ快適な交通でなければならない」と同氏は語った。

 新モビリティによる新たな市場の創出について、重松氏が他業界の事例として挙げたのがデジタルカメラである。同氏は、「電子データとして画像が取得できるデジタルカメラは、データの加工手段の進化とも相まってカメラ業界に変革をもたらした。そして、カメラの市場に参入するメーカーが増え、需要も爆発的に拡大した。新モビリティの創造に求めるのは、このようなインパクトだ」と期待する。

 その上で、「自動車メーカーの直近の事業目標では、自動車の需要が着実に拡大するであろうBRICsをはじめとした新興国市場に対して、環境、安全、快適という従来のテーマの延長線上にある技術を低コスト化して適用した製品を提供することが柱となるだろう。一方で、現状の自動車に対する需要が飽和しつつある日本、北米、西欧市場においては、中長期的な取り組みとして、新モビリティの実現を目指す必要があると考えられる。そのためにも、自動車メーカーは、従来よりも広範囲な異業種連携を行う必要があるだろう」(重松氏)との考えを明らかにした。

国策としてのパワエレ開発に期待

 重松氏は、新モビリティを実現するためのカーエレクトロニクス技術を4つ挙げた。次世代電池や新パワーデバイスなどの「パワーエレキ」、IT技術を利用してドライバーに対して適切なサービスを提供する「ツナガル技術」、ITSにより交通流の群制御などを行う「次世代新交通」、ネットワーク処理を含む組み込みプラットフォームの標準化を実現する「ソフトウエア」である。

 特に、パワーエレキについては、「北米にはCPES(Center for Power Electronics Systems)、欧州にはECPE(European Center for Power Electronics)というパワーエレクトロニクスの研究開発組織が存在し、大学、企業が参加して積極的な活動を行っている。パワーエレキは、電動自動車の開発には特に有用なので、日本やアジアにも同様の組織が早急に作られることを望む」(重松氏)との見解を示した。

(朴 尚洙)

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