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ルネサステクロノジ(以下、ルネサス)は2008年10月、同社の半導体研究/開発(以下、R&D)の取り組みについて、記者向けに説明会を行った。
同社の取締役 製品技術本部長である中屋雅夫氏は、「半導体の出荷額/出荷量はともに右肩上がりであることから、半導体は依然として成長産業だと見ている」としながらも、1995年以降はチップの平均販売価格(ASP)が下降し続けていることを指摘した。このような中、ルネサスの半導体R&Dの方向性については、「従来のような微細化や高性能化の追求というよりも、設計手法の開発などに重点を置く」と述べた。なぜなら、「プロセスの微細化に伴い設計費用の増大が問題になっている」(同氏)からだ。例えば、65nmプロセスでの設計費用は、90nmプロセスに比べて約2.5倍にも上る。この結果、チップ当たりのトータル費用における設計費用の割合が大きくなり、生涯生産数量を増加させなければ採算が取れない状況になっているという。中屋氏は、「いかに(システムレベルの)設計費用を削減していくかが重要な課題となる」と語った。
製品価格の低下や設計費用の増大といった課題を受け、ルネサスはR&Dのテーマとして「設計効率の向上」と「製品の付加価値の向上」の2点を掲げた。下がり続ける製品価格を上げるには付加価値を高めることが不可欠であり、設計費用を抑えるには効率化を図る必要があるからだ。中屋氏は、これら2つのテーマに対するアプローチとして、「プラットフォーム化」や「新設計手法の実現」、「マイコンに内蔵するフラッシュメモリー技術やRF/アナログ技術、セキュリティ技術の開発」などを挙げた。
ここでいうプラットフォーム化とは、従来のようにICのみを提供するのではなく、ミドルウエアやドライバ、OSなども併せて提供することだ。これにより、顧客にとっては製品の開発が容易になるだけでなく、機能の実現やカスタマイズなどにも柔軟に対応できるようになるという。中屋氏は、「ソフトウエアも含めた多様なIP(知的財産)をプラットフォームとして包括的に提供することで、製品の付加価値の向上と設計の効率化の両方を図りたい」と語る。
設計効率の向上に不可欠なのが、システムレベルの設計手法の開発である。中屋氏は、「これまでのEDA技術は、レイアウトや論理設計に焦点が当てられてきた。しかし、実際に最も時間とマンパワーを要するのが、スペックから論理回路に落とし込むところまでだ」とし、「この部分を効率化するために『バーチャルプラットフォーム』や高位合成の手法を開発した」と述べた。これまでは、アーキテクチャ設計が終わりSoC(System on Chip)設計がある程度決まった段階でソフトウエア開発を始めていた。それに対し、ルネサスが新たに開発した設計手法では、C言語でシステム機能を記述し、それを使ってバーチャルプラットフォームを作ることで、ICが完成する前からソフトウエアの開発を始められる(図1)。これにより、開発期間の短縮が可能になるという。
一方、付加価値の向上は、ルネサスが持つ豊富なハードウエアIPにより実現する。例えば、CPUコア「SH4-A」や画像処理に適用する並列プロセッサ「MXコア」、動画像CODEC専用の「VPU」などがある。
また、中尾氏は、付加価値を高めるために特に強化したい分野の1つとして、マイコンに内蔵するフラッシュメモリーを挙げる。ルネサスは、低消費電力/低電圧動作を特徴とするNOR型フラッシュメモリーと、大容量/高速動作が特徴のMONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)型フラッシュメモリーを開発してきた。2007年10月には、90nmプロセスのMONOS型フラッシュメモリーのサンプル出荷を開始している。さらに、書き込み速度が速く書き換え回数も多いMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)にも力を入れている。中屋氏によると、90nmプロセスを採用したMRAM搭載フラッシュマイコンのサンプル出荷を2009年中には開始する予定だという。
もう1つのトピックとして、中屋氏は、R&Dのインフラ強化について説明した。これは、継続的なR&Dへの投資、世界的な規模での設計リソースの確保、パートナ企業との連携の強化を柱とする。まずR&Dへの投資だが、ルネサスは売り上げの15~16%を継続的に投資している。設計リソースに関しては、同社は、中国やベトナム、フランスなどの海外に約1000人(2007年の数字)の設計人員を抱えているが、これを2011年までに2倍の2000人に増やす予定だという。全拠点について同様の比率で増員するわけではなく、「SoCの論理設計や検証を受け持つベトナムや、4~32ビットまでのマイコンの設計を担当する中国、アナログ/電源の開発を担当するマレーシアの3拠点を中心とした人的リソースの確保になる見込み」(中屋氏)だという。また、R&Dリソースの有効活用や、R&Dの負荷軽減のために、日立製作所や三菱電機、パナソニック、ベルギーIMECなどから成るコンソーシアムでの連携について、より一層の強化を図りたいとしている。
(村尾 麻悠子)
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