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桜井 忠 サクラ・ボ / 小林 幹 工学院大学 |
電力蓄電素子である電気二重層キャパシタ(以下、キャパシタ)は、1個当たりの充放電電圧が低い。そのため、利用時には、キャパシタを何段か直列に接続し、必要な電圧まで昇圧して使用する。各キャパシタには特性上のバラツキがあるので、単純に直列接続しただけだと、各キャパシタの充電電圧の値に差が生じることになる。そして、各キャパシタには電圧の上限値が存在するため、その電圧に達したキャパシタに対しては、順次、充電電流をバイパスするためのバランス回路(並列モニター回路)が必要となる。さらに、キャパシタの下限電圧の制限についても考慮しなければならない。
図1に示したのは、基本的なバランス回路として知られている「簡易型並列モニター回路」である*1)。キャパシタC0を充電する際、発生するキャパシタ電圧Eを抵抗R1とR2で分圧し、その電圧を可変型シャントレギュレータX1に加える。この電圧が設定した値を超えると、X1がオンになり、その出力がpnpトランジスタQ1をオンにする。すなわち、充電電圧であるキャパシタ電圧Eが過大になると、充電電流がキャパシタC0をバイパスしてQ1と抵抗R4の回路を流れ、過充電電圧が制御されるのである。
しかしながら、この回路には、以下のような課題がある。
●複数の情報信号を回路から取り出すことができず、外部のマイクロコントローラ(以下、マイコン)から十分に制御することができない(実際、筆者らがこの回路の実験を行ったところ、制御が不十分であることから熱暴走を起こした)
●トランジスタQ1としてはpnp型のバイポーラかpチャンネルのMOSを使う必要があり、nチャンネルのMOSに比べると性能が悪い
筆者らは、これらの課題を解決する新たなバランス回路の方式を考案した。また、実際に試作を行った結果、優れた制御特性が得られることが確認できた。
図2に示すのがその充放電バランス回路である。この回路の最大の特徴は、コンパレータ機能を備えたマイコンU1(米Microchip Technology社の「PIC12F629」)による制御が行えることだ。このU1のほかに、基準電圧ダイオードVref(「LM285-1.2」)、パワーMOSであるM1およびフォトカプラーU2A、U3Aなどで構成されている。なお、抵抗R2とコンデンサC1から成るRC低周波発振回路は、消費電力を削減するためのものだ。キャパシタC0としては、動作電圧が2.0V~4.0V、容量が2000Fの製品(アドバンスト・キャパシタ・テクノロジーズ製)を使用した。
この充放電バランス回路において、マイコンU1の電源としてはキャパシタ電圧Eを用いている。U1が内蔵するコンパレータは、その電源電圧をプログラムによって分圧して得た内部基準電圧と、入力電圧である外部基準電圧1.2V(Vref)とを比較して動作する。従って、このキャパシタ電圧Eに比例した2種類の内部基準電圧を得るようにプログラミングしておけば、コンパレータから2種類の信号を出力することが可能になる。1つは、充電時にキャパシタ電圧Eが4.0V以上になると、出力端子GP0によってパワーMOSであるM1をオンにするのと同時に発生する「オーバー電圧」という信号である。これは、出力端子GP3から出力し、この状態でハイレベルになるものとする。もう1つは、放電時にキャパシタ電圧Eが2.0V以下になると出力される「アンダー電圧」という信号である。こちらは、出力端子GP4からの出力がハイレベルになるものとする。マイコンU1は、電圧が2V以下でも動作し、出力端子GP4の出力でフォトカプラーU3Aをオンさせることができる。
図2は1つのキャパシタに対応する回路だが、全体として6組のキャパシタ/充放電バランス回路を直列に接続し、24Vの充電電圧(4V×6組)を得ることとした。それとは別に、システム全体の制御をつかさどるメインのマイコンを用意する。このメインのマイコンは、充電時、放電時に以下のように動作する。
●充電時:直列に接続したキャパシタのうち1つでも4Vに充電されたら、フォトカプラーU2Aからの信号出力1(オーバー電圧信号)により、充電電流をステップダウンしてバランス回路の消費電力を下げる。そして、全キャパシタが4Vに充電されたら充電を瞬時に停止する
●放電時:全キャパシタのうちの1つでも2Vまで放電されたら、ほかのキャパシタの電圧が2V以上でも、フォトカプラーU3Aからの信号出力2(アンダー電圧信号)により、瞬時に放電を停止する
本回路は、こうした複雑な制御を可能にしている。
表1に示したのは、6個のキャパシタ(2.0V~4.0V/2000F)を直列に接続した電源システム(4V×6組=24V)を、メインのマイコンにより制御し、数十回繰り返し充放電した結果である*2)。使用したキャパシタには、図1の簡易並列モニター回路を用いて実験した際に発生した熱暴走によって、少し劣化したものも含まれている。それらも含めて、繰り返し実験を行って得られた結果はほぼ同じ値を維持しており、また精度良く充放電電圧を制御できていることがわかる。すなわち、この制御方式が優れていることが明らかになった。この方式を採用することは、キャパシタの寿命を延ばし、信頼性を高めることにつながる。強電機器である無停電電源用だけでなく、繰り返し動作の多い起動/回生のための補助電源用としてもキャパシタを活用することが可能になる。
なお、実験結果を見ると、直列接続したトータルの電圧が24V(4.0V×6個)まで充電されていない。これはキャパシタの内部抵抗の影響によるものである。また、放電についても12V(2.0V×6個)まで下がっていないが、これは内部抵抗の影響のほか、6個のキャパシタのうち1つでも端子電圧が2Vに達したら、ほかのキャパシタが2V以上でも放電を停止するという制御を行っているからである。
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