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米NVIDIA社でモバイルデベロップメントリレーションシップ部門のマネジャを務めるHoward Cho氏(写真)が2008年5月に来日。同社の携帯機器向けアプリケーションプロセッサ「APX 2500」について説明した。
APX 2500は、2008年2月にスペインで開催された『Mobile World Congress 2008』で発表された携帯機器向けアプリケーションプロセッサである。シングルコアのARM11 MPCoreとビデオ/オーディオの圧縮/伸張処理を行うHD AVP(high definition audio video processor)、3D/2Dの画像処理を行うプロセッサ「ULP(超低消費電力)GeForce」、イメージセンサーからの撮影画像を処理するイメージ処理プロセッサ、液晶ディスプレイパネルやHDMI(high definition multimedia interface)に対応したデュアルディスプレイコントローラなどを集積したデバイスである。アプリケーションに応じてクロック周波数や動作ブロックを最適化して消費電力を削減する技術「NVIDIA nPOWER」を導入しており、少ない消費電力で720p解像度のビデオやMP3で圧縮された音楽を再生できる。同製品の評価/デモ機である「APX 2500開発プラットフォーム」(図1)では、720p解像度のビデオを10時間、MP3オーディオを100時間、連続して再生することが可能だ(図2)。また、720p解像度のビデオ再生の場合、HD AVPがその処理のほとんどを行い、CPUコアの負荷は5%以下となる。そのため、CPUコアはユーザーインターフェース(user interface:UI)機能をはじめとするナビゲーション処理に専念できるという。
APX 2500のプロセッサコアであるARM11 MPCoreは、最大600MHzで動作し、32Kバイトの命令/データL1キャッシュメモリーと256KバイトのL2キャッシュメモリーを備える。HD AVPは、H.264やMPEG-4、WMV(windows media video) 9などのビデオフォーマットと、MP3やAAC(advanced audio coding)、AAC+(HE-AAC v1)、eAAC+(HE-AAC v2)、WMA(windows media audio)、RealAudio、AMR(adaptive multi-rate)などのオーディオフォーマットに対応する。解像度が720pのビデオを30フレーム/秒でデコード/エンコードする能力を備える。
ULP GeForceは、ピクセルシェーダとバーテクスシェーダの両方の処理が可能なユニファイドシェーダアーキテクチャを採用しており、OpenGL ES 2.0とDirectX3D Mobileに対応する。パソコン用GPUのGeForce5000シリーズに相当する性能を備えており、FPS(一人称シューティング)ゲームである「QUAKE III」がVGA(video graphics array)解像度で最大30フレーム/秒で動作するという。イメージ処理プロセッサは、最大1200万画素のカメラに対応しており、撮影画像の補正や顔認識などが可能だ。ディスプレイコントローラは、2つの異なる画面を出力できるデュアルディスプレイに対応している。外部ディスプレイ向けのHDMI 1.2やアナログRGB、コンポジットなどのインターフェースも備える。また、ビデオ再生技術「PureVideo」を導入していることから、ビデオのスムーズな再生が可能だという。
APX 2500は、主に携帯電話機や携帯型ナビゲーション端末、携帯型メディアプレーヤなどの用途に適した製品である。すでにサンプル出荷を開始しており、量産出荷できる状態にあるという。パッケージの外形寸法は12mm×12mmで、価格は要問い合わせ。APX 2500開発プラットフォームは、1~2カ月間の期限内で開発者に対して貸し出される。
APX2500は、汎用プロセッサであるCPUコアと特定用途向けプロセッサであるGPU、HD AVPなどを集積したSoC(system on chip)である。このような複雑なICで用いるソフトウエアの開発は、ソースコードが複雑/大規模になり、開発期間が長期化するという問題がある。この問題に対してNVIDIA社は、「OpenKODE」と、それを拡張する「KDWM」、3D GUI(graphical UI)のフレームワークである「uiFusion」などを含むSDK(software development kit)を提供する(対応OSは、Windows CE)。
OpenKODEは、標準化団体Khronosグループが提案するソフトウエアのプラットフォームである。OS/ハードウエアの違いを吸収し、高度なマルチメディア処理を実現するAPI(application program interface)の集合として作られている。OSが備える、ファイルやスレッド、ネットワーク、ウィンドウ、メモリーなどに対する処理を標準化されたAPIで置き換える「OpenKODE Core」と、3Dグラフィックスを取り扱うOpenGL ES、Flashなどのベクター2Dグラフィックスを取り扱う「OpenVG」、ストリーミングビデオ/オーディオを取り扱う「OpenMAX」、オーディオを取り扱う「OpenSL ES」、これらの間の通信/同期化/変換を行う「EGL」で構成される。直接ハードウエアにアクセスするのではなく、高度に抽象化されたAPIを利用できるので、アプリケーション開発に要する期間を短くできる。また、ハードウエアやOSの違いが覆い隠されるため、ソフトウエアの移植が容易になる。
KDWMは、3D GUIを実現するためにNVIDIA社が開発したOpenKODEの拡張である。OpenKODEのEGLでは、OpenGL ESとOpenVG間の通信だけをサポートしている。KDWMは、それを拡張してOpenGL ESとOpenMAX間で通信できるようにしたもので、これによってOpenGL ESによる3D描画上にOpenMAXによるビデオ表示を行うことが可能になる。NVIDIA社はKDWMをKhronosグループに提供し、これをオープンスタンダードにしたいと考えている。
uiFusionは、APX 2500上で動作する3D GUIのデモ(前掲の図2)で用いられているウィンドウマネジャのフレームワークである。マルチタスクで動作する複数のアプリケーションによるサーフェスの更新を集約/合成/最適化する。ソースコードが開示されており、さらに「量産品に使用できる品質を備えている」(Cho氏)ので、実際の機器にも流用可能だ。
こうした機能を含むSDKを提供することによって、NVIDIA社は、携帯機器メーカー各社へのAPX 2500の導入を促進する考えだ。Cho氏によると2008年末には、同プロセッサを搭載した製品が出荷されるという。
現在のNVIDIA社の全売り上げに対する携帯機器向け製品の割合は、わずか数%である。とはいえ、拡大傾向の携帯機器市場に対して、同社は何もしてこなかったわけではない。スマートホンや車載用ナビゲーション機器向けに組み込み用GPU「GoForceシリーズ」の開発/販売を行っていたし、2006年11月には携帯型オーディオプレーヤ向けSoCを開発する米PortalPlayer社を買収するなどして、携帯機器市場におけるノウハウを蓄積していた。
Cho氏は、「GPU単体のICは、パソコンの分野では市場の要求に非常によく合致している。だが、携帯機器の分野では消費電力や実装面積の問題があるため、GPUだけを提供してもうまくいかない」と携帯機器向けにCPUとGPUを集積したAPX 2500を開発した理由を説明した。続けて、APX 2500に導入された技術について、「NVIDIA社はパソコン分野で15年にわたってGPUを開発してきた。その資産が生かされている」(同氏)と語った。
例えば、PureVideoは、もともとはパソコン向けのGPUに導入されている技術である。また、HD AVPは、デコードしたビデオ画像を、CPUを介さずに3D/2D画像処理プロセッサのULP GeForceに直接送ることが可能である。それによって、CPUに負担をかけずにビデオを再生することができる。これもパソコン向けのGPUから導入された技術だ。
さらに、Cho氏は、「APX 2500の開発には、約2年の期間を要した。投入したハードウエア/ソフトウエア技術者の工数は、800人年にも上る」と述べ、同製品にかける意気込みを強調した。
(小野 明久)
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