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USBは、その当初からのデータ転送の用途だけでなく、携帯電話機の充電用途にも用いられるようになった。こうした動きを受け、最近になって、USBの利用を拡大しようとする新たな規格がいくつか制定された。その結果、充電用途の設計が簡潔に行えるようになってきている。本稿では、充電用途のUSB新規格と、それに従った充電器の構成例を紹介する。 Takashi Kanamori/George Paparrizos 米Summit Microelectronics社 |
USB(universal serial bus)は、特に携帯型機器の分野において最も広く普及した接続技術になった。その利用が一般化したことを受けて、USB-IF(USB Implementers Forum)は2001年12月にUSB-OTG(On-The-Go)を策定した。これによりパソコンを経由しないでUSB対応の機器同士を接続することが可能となり、さらにその利用が拡大してきている。
用途の広がりは、プリント配線板の省スペース化、部品のロープロファイル化(低背化)に対する要求を高めることとなった。また、USBコネクタに対してもより一層スリムな構造が求められている。
さらに、データ転送だけでなく、USBを電池の充電用途に用いる例も増えてきている。そのため、この用途に適した新たな要求も生まれることとなった。この結果、そうした要求に応えて、より使いやすいUSBを提供するための新たな業界標準を確立すべく、いくつかの新仕様がUSB-IFによって策定された*1)、*2)。
その一方で、これらの新仕様のほかに新たな規格を作ろうという動きも出ている。その中で、最も影響力の強いものが、携帯電話機を対象として中国政府が制定した新規通信業界標準(China's new telecommunications industry standard。以下、中国通信規格)だ*3)。この規格は、一般ユーザー用端末のコストを低減することや、充電機能の互換性を確保すること、環境保護に向けて電力消費を最小限にすることなどを狙ったものである。例えば、充電に関してはすべての携帯電話機に対応した汎用充電器として使用できるようにUSBコネクタを設けることなどが要求されている。また、充電器と携帯電話機が備えなければならない安全性および機能性能に関する要求も定められている。
近年のパソコンの多くは、USBポートによりフラッシュメモリーカードやデジタルカメラ、携帯電話機、プリンタ、マウス、キーボードなどの周辺機器との間でデータ転送が行える。その規格であるUSB 2.0は、データ転送レートが480メガビット/秒と高速で、プラグアンドプレイ機能も備えることから利用範囲が非常に広い*4)。
また、パソコンのUSBポートは電力供給能力を備えている。そのため、USBポートは簡便に使用できる電源としても利用されている。その最も代表的な応用の1つが、単セルのリチウムイオン電池やリチウムポリマー電池への充電である。1日に何時間もパソコンを使って作業している人にとって、USBで電池を充電できる機能は、いつでも利用可能な非常に便利なものだ。
USB 2.0では、ポートから取り出せる電力は電圧が5V±10%、最大電流が500mAとなっている。この電力供給能力を利用すると、アプリケーションによってはAC-DCアダプタが不要になりコストダウンの効果が得られる。その典型的な例が携帯型ミュージックプレーヤである。ユーザーが楽曲のリストを更新する際、ミュージックプレーヤはUSBを経由してパソコンに接続されおり、データの転送が行われる。このデータ転送と同時に電池への充電を行おうと考えるのは、自然なことだろう。デジタルカメラや携帯型GPS(global positioning system)ナビゲーション機器、スマートホンなども、USBを用いてパソコンに画像データの転送やメッセージの送受信を行う機器である。これらの機器も、USBを用いた充電によって利便性を高めることができる。
上述したような利便性をさらに高めようと、USBの充電機能に関する新たな規格がいくつか策定されている。以下、代表的な規格を2つ紹介する。
●中国通信規格
先述した中国通信規格は、USBを用いた充電機能の互換性と安全性を確保するために、電気/機構に対するさまざまな要求を定めている。その1つは、新たに販売される「ウォールチャージャ(壁に挿して用いるような充電専用器)」に対し、USBタイプA規格に準拠する充電用のコネクタを設けるよう要求していることだ(図1)。このような機構的規定を設けることにより、USBポートを備えた携帯電話機の充電に、充電器とパソコンのUSBポートの両方を使用できることとなる。
この新標準における充電器の電力供給能力は、出力電圧が5V±5%であるが、電流については少なくとも300mA以上で、最大1800mAまでの電流を供給するよう規定されている。このように出力電流に対して選択の幅が与えられたことから、低コスト機器にも高性能機器にも適用することが可能になる。また、この中国通信規格では、新たな規定として、D+端子とD-端子間の短絡の有無を検知することにより、それが充電器として利用可能なものか否かを判定できるようにしている。
●USB-IFの新規格
中国通信規格とは別に、USB-IFも充電に関する新たな規格を制定している。USB-IFは2007年4月、「Battery Charging Specification 1.0(以下、Bat
tery Charging 1.0)」を制定した。この規格では、最大1800mAの充電電流を供給することが可能なほか、サスペンド状態の機器に対して最大100mAの電流を供給することも可能になった。従来の規格では、サスペンド状態の機器に対して供給可能な電流は最大2.5mAであったので、大幅に増加したことになる。これによって、内蔵の電池を消耗しきって起動できない機器を、正常動作が可能なレベルまで非常に短時間で充電できることとなる。
また、この規格では、USBによるデータ転送機能を持たない「充電専用器(dedicated charger)」、ホスト機能と充電機能を備えた「ホストチャージャ」、ハブ機能と充電機能を備えた「ハブチャージャ」の3種類の充電器が規定されている。いずれも機構的構造は同等でUSBコネクタを用いる。この仕様により、携帯型機器の使われ方やシステム動作に応じて充電器を選択できるようになるだろう。
そのほかに、USB-IFは2007年1月、次世代のUSBコネクタとして従来のMini-USBコネクタと比較して外形寸法が半分のMicro-USBコネクタを発表した(図2)。このコネクタを導入することにより、携帯型機器のさらなる薄型化と小型化が実現できる。また、Mini-USBコネクタと同様にUSB-OTGで必須となるIDポートをサポートする。USB-OTGを用いれば、パソコンなどのホスト機器を介すことなく携帯型機器間の通信が可能となるため、「2~3年後にはMicro-USBコネクタが携帯型機器用の標準的な接続形式になる」と予測されている。
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