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2008年4月16日~18日、千葉県の幕張メッセで『テクノフロンティア(TECHNO FRONTIER)2008』が開催された。モーター、メカトロニクス制御、電源システム、ボードコンピュータ、熱対策などの分野の新製品/新技術が多数展示されたが、ここでは、携帯型機器に適用可能なノイズ対策技術に注目してリポートする。
米PulseCore Semiconductor社(以下、PulseCore社)は、USB 2.0のEMI(electro magnetic interference)ノイズを低減するスペクトラム拡散IC「PCS3P73U00A」を展示した(図1)。USB 2.0の物理層チップへ入力される24MHz/48MHz等の基準クロックラインに挿入し、スペクトラム拡散を行うものである。これによって、この基準クロックを受け取るUSB 2.0の物理層チップが放出する(USB 2.0インターフェースのケーブルなどから放出される)480MHzのEMIノイズを3dB~5dB減衰させることができるという。パッケージは、TDFNとTSSOP、SOICの3種類。すでにサンプル出荷を開始しており、3000個購入時の単価は0.95米ドルを予定する。
従来、USB 2.0の規格/認証試験はタイミング仕様が厳しいため、スペクトラム拡散技術を適用することができなかった。だが、同ICは緻密に拡散周波数を制御することにより、USB 2.0の規格/認証試験に適合させることを可能とした。また、受動フィルタや導電塗装、高価なシールドなどを用いた場合と比較して、低コストでEMIノイズを抑えることができるという利点もある。
そのほかに、PulseCore社のブースでは同社独自のスペクトラム拡散技術「Timing-Safe」を紹介していた。これは、サイクル期間内でタイミングを微調整するものである。
従来のスペクトラム拡散技術では、位相制御が厳格に行われておらず、拡散前のクロックと比較するとスペクトラム拡散を適用した信号の位相がずれてしまうという問題があった。そのため、インターフェースのクロックがEMIノイズ源になっていても、複数の信号間のタイミングを保持しなければならないので、インターフェースを駆動するICの基準クロックに間接的にスペクトラム拡散技術を適用することでEMIノイズを抑制していた。
一方、Timing-Safeでは、位相シフトやサイクルスリップを100%防ぐことができるという。このことによって、DRAMインターフェースやビデオインターフェースなどにおいて、ノイズ源であるクロック信号のみに直接的にスペクトラム拡散技術を適用することが可能になり、対策が容易になるという。
Timing-Safe技術を採用したICとしては、「PCS3P73Z01」や「PCS3P73Z11」などがある。いずれも消費電力が10mW~15mWと少ない。この値は、EMIフィルタを用いた場合の消費電力40mW~80mWよりも優位にある。このことから、携帯型機器のEMIノイズ対策に最適だという。
NECトーキンのブースでは、透磁率が150の電波吸収シート「バスタレイド RS9」を展示していた(図2)。この透磁率は、同社従来品の電波吸収シート「K4E」と比較して約7倍高い。そのため、従来より薄いシートで同等の効果が期待できるという。薄型化への要求が強い携帯型機器のEMIノイズ対策用途などに向ける。
そのほか、同社はハロゲンフリーの「バスタレイド EFR」やRFID(radio frequency identification)用の「バスタレイド BD」などの電波吸収シートも併せて展示していた。バスタレイド EFRは透磁率が60であることと、ハロゲンや鉛、塩化ビニールを含まないので、欧州連合のRoHS指令(restriction of hazardous substances directive)に適合することを特徴とする。他社のRoHS指令対応品と比較して透磁率が高いので、ノイズ抑制効果に優れるという。
一方のバスタレイド BDは、RFIDによる通信可能距離を伸ばす効果を持つ。RFIDは、電磁波を利用して通信を行うので、それを発するアンテナの近くに基板やシールドなどの導体が存在すると、その電磁波によって導体に渦電流が発生する。この渦電流により磁界が発生し、それがアンテナからの電磁波を打ち消すように働くため、RFIDの通信距離が短くなるという問題がある。特に、携帯型機器は内部の空間が非常に限られているため、アンテナの近くに基板やシールドなどの導体があることが多く、この問題への対策が重要になる。対策方法としては、導体とRFIDアンテナの間に、透磁率が高く、磁気損失の少ない物質を挿入することが効果的であり、それによってアンテナからの磁界が導体を通らないように誘導することができる。一般の電波吸収シートは電波を抑制することを目的とし、透磁率μ'と複素透磁率μ"の両方を高めている。一方、バスタレイド BDは、透磁率μ'は高めているが、複素透磁率μ"は下げている。ここで、磁気損失係数はμ"/μ'と表され、時期損失は複素透磁率μ"に比例し、透磁率μ'に反比例する。つまり、バスタレイド BDは、磁界をより多く通過させ、しかも磁界の損失が少なくすることを狙った電波吸収シートなのだ。
このようなRFID用電波吸収シートは、RFID対応機器の拡大とともに利用が拡大しており、NECトーキンのほかTDKや竹内工業(TKK)など各社が開発を行っている。
太陽誘電も電波吸収シートの展示を行っていた。2007年12月から量産を開始した200万回以上の屈曲に耐える電波吸収シート「EMSEAL SFX1」と、開発品の「EMSEAL SFX2」、「EMSEAL SFX5」である。
EMSEAL SFX1は、高透磁率の金属磁性粉を液状ポリマーに練り込んだ構造をしており、高い屈曲耐性を備える。このためディスクドライブにおけるピックアップのフレキシブル基板のような可動部分のEMIノイズ対策の用途に最適だという。この製品はすでに量産を開始している。一方、EMSEAL SFX2は、同SFX1と比較して500MHz以上の電波に対して約3倍高い吸収特性を備えたものであり、フェライトコアの代替として使用することが可能だ。2008年夏からの量産を予定する。
EMSEAL SFX5は、同SFX1と同等の電波吸収特性と1W/m・K以上の熱伝導性を備えたもの。電波吸収シートと熱伝導シートを重ねたような構造をしており、熱伝導シート部にはアルミナとシリコン系樹脂が用いられている。シリコン酸化物であるシロキサンが接点障害の原因になると考えられていることから、現在、シリコンを含まない製品を開発中だという。
三菱ガス化学(MGC)は、電波吸収シート「エルノス」を展示した(図3)。従来の電波吸収シートは金属などの磁性体を主原料にしたものであったが、同製品は独自開発の非金属系材料を主原料にしたものである。このため、従来の電波吸収シートと比較して軽く、薄くすることができたという。また、従来品と比較してデシベル比で約3倍高いノイズ抑制効果を備える。主に軽量化や薄型化を要求される携帯型機器に向ける。
また、三菱ガス化学は透明電磁波シート「FILSHIELD」を展示した。200MHzから1GHzの周波数帯域で最大40dBの電磁波シールド性能と82.5%の全光線透過率を備える透明な電波吸収シートである。100℃の耐熱性と95%の湿度(温度は65℃)のいずれの環境中でも500時間以上の耐久性を実現する。主にディスプレイデバイスにおけるEMI対策用途に向ける。
村田製作所は、静電容量が27μFと大容量の3端子セラミックコンデンサ「NFM31PC276B0J3」を展示した。同社従来品の3端子セラミックコンデンサでは最大10μFだった静電容量を、3倍弱となる27μFにまで引き上げた製品である。主に、ノート型パソコンや薄型テレビなどの電源回路での利用をターゲットとする。主な仕様は外形寸法が3.2mm×1.6mm×1.3mm、定格電流が6A、使用温度範囲が-40~85℃。すでに、販売を開始している。
ICへの給電ラインなどの電源周辺回路におけるノイズ対策では、一般的に2端子の積層セラミックコンデンサが使用されている。その代替にノイズ除去効果の高い3端子セラミックコンデンサを使うと、2端子の積層セラミックコンデンサが10個必要なケースでも、2個の3端子セラミックコンデンサで済むという。ただし、3端子セラミックコンデンサでは、静電容量があまり大きいものは存在しないため、大容量が必要な部分については2端子の積層セラミックコンデンサを使用せざるを得なかった。村田製作所の3端子セラミックコンデンサは従来と比較して高い容量を備えるため、電源周辺回路のノイズ除去部品を3端子セラミックコンデンサだけで構成できるようになるという。
そのほかに、村田製作所は1005サイズ(1.0mm×0.55mm×0.3mm)の3端子セラミックコンデンサ「NFM15PC474B0J3」を開発品として展示していた。同社従来品の3端子セラミックコンデンサは1608サイズが最小であったが、その半分以下の実装面積を実現している。静電容量が0.47μFで、定格電流が2A、使用温度範囲が-40~85℃である。携帯電話機などにおける電源回路の用途に向ける。販売時期は2008年夏ごろを予定する。
(小野 明久、朴 尚洙)
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