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Howard Johnson |
混み合ったバーで2人の男が出会った。2人とも平均的な身長だ。2人は握手を交わした。1人はさらに時間をかけて、握手した手を上下に動かした。それを受け、もう1人の男もその動きに合わせて手を上下に動かした。心のこもった握手が、床から80cmほどの高さで行われたのであった。
ここで、2人のうち1人が、プロバスケットボールのYao Ming選手(Houston Rocketsに所属)だったならどうなっただろうか。彼の身長は、世界で最も高い部類に当たる229cm(7フィート6インチ)だ。握手は同じように行われるだろうが、両者の手の位置は、80cmよりも少し高いところになるだろう。では、2人のうち1人が小柄なハリウッド俳優のDanny DeVito氏ならどうなるか。もう1人の男は少し低い姿勢で構えるはずだ。このように、背の高さに大きな差がある2人が握手を交わすときには、その差を互いに吸収しようとするであろう。
ドライバ回路が負荷を駆動するときも同様の状況になる。図1に示すドライバは、出力に静的な負荷を接続しており、その状態で出力をハイ、ローに変化させる。その波形は、図2のようになる。ここで、ドライバの負荷としては、50Ωの抵抗と可変電圧源VTを接続している。ロジック素子の出力段には、通常、トーテムポール型のドライバが使われているが、それがどのようなタイプであれ、出力はすべて同様のものとなる。この図に示した波形の違いを詳細に検討すれば、ドライバについての理解を深められる。
まずは終端電圧VTが0Vのケースについて考える。図2では、一番下にある赤色の波形がこのときの出力信号に当たる。この波形を見ると、ハイにドライブしたときの電圧は定格レベルのVOH(緑の破線)に達していない。これはなぜか。その理由は、この条件では、負荷に流すべき電流量が、ドライバが供給可能な電流量を超えているからである。このことは、出力電流を計算してみれば容易に理解できる。出力電流の値は、抵抗RTの両端の電位差をその抵抗値で割ることで得られる。例えば、赤色の波形が0.8Vまで上昇したとすると、終端電圧が0Vであることから、出力電流は(0.8V-0V)/50Ω=16mAとなる。実は、16mAという電流がこのドライバの限界値なので、この条件では、定格であるVOHのレベルまで出力を引き上げることはできないのである。ほとんどのトーテムポール型ドライバでは、50Ωの負荷に対して出力電圧をVOHまで引き上げることはできない。この条件だと、例外的に高い駆動能力を備えたドライバでなければ、定格レベルを満たすことはできないのである。Yao Ming選手は例外的に背が高く、力の強い人だ。彼がDeVito氏と握手するのであれば、DeVito氏の肩の関節が外れるくらい、相当強く腕を引っ張り上げることができるだろう。
続いては、終端電圧VTが0Vの場合のロー側の電圧レベルに注目してみよう。図2の赤色の波形を見ると、こちらは正確に0Vになっている。その際流れる電流の値は、当然0mAとなる。ドライバは、電流を流し出す(ソース)ことにより出力電圧をVTより高くする。一方、出力電圧をVTより低くするには、電流を吸い込む(シンク)。そして、出力電圧がVTに等しくなれば、ドライバは何もしなくてよいのである。
次は、Yao Ming選手の身長に、DeVito氏の身長を合わせてみよう。DeVito氏に、はしごに登ってもらうのだ。この場合、Yao Ming選手は姿勢を低くする必要がなく、握手は高い位置で行われる。同様に、電気の世界では、終端電圧VTを上げれば、出力波形の電圧レベルが高くなる。一方、VTを下げれば反対のことが起きる。
ここに終端条件の設計上のコツがある。すなわち、終端電圧VTは、ドライバが出力をVOHまで引き上げられる程度に高く、同時にVOLまで引き下げられる程度に低くする。加えて、その際に流れる電流がドライバの能力を超えることなく、また終端抵抗を焼き切らないような条件に設定するとよい。図1に示すドライバであれば、VTを0.75Vに設定すれば、これらの条件を満たすことができる。その場合の電流値は、ハイにドライブする場合で9mA、ローにドライブする場合で-9mAとなる。
<筆者紹介>
Howard Johnson
Howard Johnson氏はSignal Consultingの学術博士。Oxford大学などで、デジタルエンジニアを対象にしたテクニカルワークショップを頻繁に開催している。ご意見は次のアドレスまで。
www.sigcon.comまたはhowie03@sigcon.com。
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