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Marian Stofka スロバキア工科大学 |
パルス信号の波形品質が問われるようなケースがある。そのような用途では、入力パルスの形を整えるパルス整形回路を用いる。その基本構成としては、正帰還のアンプ回路が用いられることが多い。この種の回路では、入力信号が閾(しきい)値をまたぐと、回路全体としてトリガー的な動作に移行する。整形が必要な回路でやりとりされるのは、ほとんどのケースでは電圧信号なので、トリガー動作により電圧レベルが一定の値まで遷移することになる。このような回路の中で最も代表的なものがシュミットトリガー回路である。ちなみに、同回路は、2008年で生誕70周年を迎える。英国の科学者であるO H Schmitt氏は、1938年に電流フィードバックを有する2段アンプとして同回路を発明した。彼が使用した2個のアクティブ素子は真空管だった。
シュミットトリガー回路の動作は、出力の遷移が入力信号波形(傾斜)によらず一定かつ高速であるという特徴を持つ。この特徴から得られる1つの結果が入出力特性にヒステリシスを形成できることだ。つまり、正出力(ハイレベル)への遷移が起きる閾値と、正出力にスイッチングされた後にローレベルへの遷移が起きる閾値の2つを用意し、その2つ閾値の差であるヒステリシス量を確保することができる。シュミットトリガー回路はロジックICにおいて広く使用されているが、そのヒステリシス特性は固定であることが多い。
シュミットトリガー以外の方法でパルス整形回路を構成することも可能である。それは高速応答の電圧リミッタ回路、すなわちクランプ回路を使用する方法だ(図1)。この回路はヒステリシス特性は持たない。また、この回路では、シュミットトリガーを利用する場合と比較すると入力電圧範囲が狭くなる。その理由は、入力電圧が低くなると電圧リミッタが作用しなくなり、回路が線形動作になるためだ。その一方で利点もある。それは、ヒステリシス特性を持つタイプのものよりも、入力電圧レベルを判定する閾値レベルの精度を高められることだ。
図1の回路では、オペアンプとして、1V/nsを超えるスルーレートを持つことから米Analog Devices社の「AD8054」を使用した*1)。また、図中のダイオードD4と抵抗RT2はなくても、この回路は動作する。すなわち、D4を短絡、RT2を削除としてもよい。以下、この構成を前提として説明を続ける。
この回路では、非線形な負のフィードバックを持つオペアンプ回路が電圧リミッタとして働く。出力電圧が-0.3V~0.6Vの範囲になると、フィードバック経路中のダイオードが非導通になることからフィードバック経路のインピーダンスが高くなる。この出力電圧の範囲は、使用するショットキーバリアダイオードの順方向の電圧降下によって決まる*2)。このときのオペアンプ回路の電圧ゲインは、オペアンプの開ループゲインにほぼ等しくなる。
出力電圧が上記の電圧範囲を越えると、出力電圧の極性に応じてダイオードD1、D2またはD3が導通し始める。その結果、オペアンプ回路の差動ゲインは、ダイオード1個の等価シリーズ抵抗をRDとして-RI/2×RDおよび-RI/RDに低下する。これに伴い、入力電圧が大きくなったときにも出力電圧はほぼ0.8Vおよび-0.4Vにクランプされる。
D4とRT2を削除した場合、一方のフィードバック経路にはダイオード2個(D1、D2)を直列接続し、その接続点とグラウンドを抵抗RT1で接続したのに対し、他方のフィードバック経路にはダイオード1個(D3)だけを挿入した形となる。その結果、電圧リミッタ特性は正負で非対称となる。この構成では、D3が導通すると、出力に周波数が200MHz程度の弱い発振の生じることがある。この発振がD1、D2がオンになり始めると軽減する。
正負の電圧リミッタ特性に対称性を持たせたい場合には、図のとおりダイオードD4と抵抗RT2を追加する。
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