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Bonnie Baker |
前回に引き続き、ΔΣ変調方式を利用するA-Dコンバータ(以下、ΔΣ型A-Dコンバータ)の仕組みについて解説する。今回は、ΔΣ変調器(以下、変調器)の動作を中心として説明を進める。
ΔΣ型A-Dコンバータでは、変調器から1ビットのコード列が出力される。このコード列は、変調器の内部にある量子化器によって、本来のサンプリング周波数よりもはるかに高速なレートでアナログ入力信号が変換された結果として得られるものだ。この変調器の動作は、入力信号を受け取って、その電圧に対応するデジタルデータ列を生成するという点では、ほかの一般的な量子化器と同様である。ただし、細かい動作は大きく異なる。その詳細は、時間軸表現と周波数軸表現の両方の観点から理解すべきである。
まず図1に示す1次の変調器を例にとり、時間軸表現で考えてみよう。この図において、変調器では、まず差動アンプによって、アナログ入力信号と1ビットD-Aコンバータからフィードバックされるアナログ電圧との差を求める。この差は次の積分器によって積分される。それによって得られた結果が次段の1ビットA-Dコンバータ(比較器)に入力される。この1ビットA-Dコンバータは、受け取った信号を1または0のデジタルデータに変換する(アナログ信号との対応で言えば、それぞれ正負のフルスケールレベルを表現していることになる)。このデータはシステムクロックに同期して変調器からの出力として送出されるとともに、変調器内のフィードバックループにある1ビットD-Aコンバータにも送られる。
1ビットA-Dコンバータが出力するコードは入力信号を極めて粗くA-D変換したものである。A-D変換を行うということは、このコードには変換に伴う量子化ノイズ(量子化誤差)が含まれているということを意味する。現タイミングでの変調器の出力Yiは、1つ前のタイミングでのアナログ入力Xi-1、現タイミングでの量子化ノイズei、1つ前のタイミングでの量子化ノイズei-1を用いて、図中に示した式のように表すことができる。
次に変調器の動作を周波数軸で考えてみる(図2)。上述したように、時間軸表現では変調器の出力は単なるパルス列になるが、周波数軸で表現すると、その出力が入力信号と高周波領域に追いやられたノイズ(ノイズシェーピングが施されたノイズ)で構成されている様子が見えてくる。図2において水色で示されているノイズの特性が、変調器を周波数軸表現で考える上でのキーポイントである。
ΔΣ型の変調器には、ほかの一般的な量子化器とは異なり積分回路が含まれている。この積分回路により、量子化ノイズの周波数分布はフラットではなくなり、高域上がりとなる。変調器の出力において、ノイズがどのようにシェーピングされているかが、周波数軸表現で考えるべきこととして特に重要である。これがA-Dコンバータの分解能/精度を表す1つの目安となるからだ。
変調器の出力に含まれる量子化ノイズは、0Hzから始まり周波数の増大とともに急速に増加して、変調器のサンプルレートに相当する周波数で最大となる。2次の変調器を用いた場合、2回の積分によって低周波領域のノイズを大幅に減衰させることができる。ほとんどのΔΣ型A-Dコンバータでは、さらに次数の高い変調器を用いている。6次程度までの変調器が使用されることが一般的だが、より高次の変調器を用いるほどノイズシェーピングの効果は大きくなる。
<筆者紹介>
Bonnie Baker
Bonnie Baker氏は「A Baker's Dozen: Real Analog Solutions for Digital Designers」の著書などがある。Baker氏へのご意見は、次のメールアドレスまで。bonnie@ti.com
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