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Jeff Fries GE Transportation社 |
筆者が務める会社は、30年以上にわたって1つの設計を基にある製品を製造していた。つい最近、その設計を改良することになり、筆者がその作業を担当した。新たな設計に対する要求事項は、小型化、低コスト化、多機能化であり、それを短期間で完成させることが求められた。リスクを避けるために、物理的なインターフェースについては、極力、従来の設計を踏襲することにした。
このような前提の下、従来どおり、外部機器とのやりとりには絶縁型のトランスを使用することにした。ただし、小型化といくつかの機能追加への要求を満たすために、いくつかの部品を従来のものから変更する必要があった。ところが、従来の設計が行われた当時は設計ドキュメントの作成が義務化されていなかったので、新たな設計に利用できるような確たる仕様書はなく、トランスに関する情報も存在しなかった。そこで、新たなトランスの選定に当たっては、巻線比を同じにし、線材径を適切に選定して、磁束密度を同じにすれば、失敗のリスクは小さいはずだと筆者は考えた。
この観点から、動作マージンを十分に確保すべく、ワーストケースでの磁気飽和条件を計算した。その計算には、B=(V×108)/(4×N×AC×f)の式を使用した。この式において、Bは磁束密度、Vは印加電圧、Nは巻き数、ACは巻き線の断面積、fは印加周波数である。この計算の結果、新たに採用しようとした部品でも、飽和条件に対して、50%以上のマージンがあることが確認できた。
さらにリスクを低減するために、プロトタイプを数台試作することにした。試作機向けの部品は、コストの観点から、部品の提供元が推奨する海外の業者を経由して発注した。また、通常の量産品は海外の工場で製造するのだが、試作機は少量なので、米国の工場で製造することになった。
試作機の完成後、筆者らはその評価を行った。その結果、まったく問題はなく、費用も予算内に収まっていた。そこで、新たな設計に基づいた量産品を当初のスケジュールどおりに出荷することになった。
量産が始まってから約2カ月後、何台かの製品が時々誤動作するとの報告が入った。現場での調査を数回行い、実験室でも何回かの再現試験を行った。その結果、誤動作は外部に接続される一部の機器との干渉によって引き起こされているものだと判明した。しかし、それらの機器との接続に問題がないことは、試作機の段階で十分に検証したはずだった。さらに問題だったのは、新たに採用したトランスの磁気飽和が根本的な原因であることだった。設計マージンが十分であることは確認したし、いくつかのトランスのサンプルや試作機によって評価を行っていたのにである。
新たな設計では、ギャップ付きのものよりも低コストで入手しやすいギャップなしのポット型コアのトランスを採用していた。確かに磁気飽和に対するマージンについて検討したのだが、その際には、電圧入力をパラメータとして計算を行っていた。しかし、実際には、電流に起因する過渡的な磁気飽和に対する検討も行う必要があったのである。
調査の結果、試作機に組み込んだトランスのサンプルでは、コア材2枚の圧着が不十分であり、その間に本来は存在しないはずのエアギャップが生じていたことが判明した。このエアギャップの効果により、試作機に用いたトランスでは磁気飽和が発生しなかったのである。
量産品で用いたトランスは、エアギャップがないよう正しく製造されていた。そのため、磁気飽和が発生して、異常動作を招いたのである。最終的には、問題のトランスを組み込んだモジュールを交換することになった。その時点では、量産品の出荷数が多くなかったことは幸いであった。
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