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半導体の微細加工技術を基本として、機械素子や演算回路、センサー、微細な構造体などを集積するMEMSが注目を集めている。MEMSによる圧力センサー、加速度センサー、マイクロホン、ビデオプロジェクタ用チップ、発振器などは医療機器や電子機器、自動車に搭載され、すでに大量生産されている製品も多い。MEMS研究の第一人者である東北大学の江刺正喜氏に、研究室における産学連携の現状や、大学の役割などについて語ってもらった。
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江刺 正喜 氏
東北大学 大学院工学研究科 ナノメカニクス専攻 教授。原子分子材料科学高等研究機構兼マイクロ・ナノセンターのセンター長も兼務する。1971年に東北大学工学部電子工学科卒業。1976年に同大大学院博士課程修了、同年工学部助手。1990年から教授。
研究室のプロフィール
小型で高度な働きをする機械の実現を目指して、センサーや処理回路、アクチュエータなどを集積したマイクロマシンの試作研究を行う。複数の研究室で設備を共同利用するマイクロ加工室には、江刺氏などによる手作りの装置が並ぶ。
私の研究室には、企業から派遣された多くの研究員が常駐してMEMS(micro electro mechanical systems)技術とその応用製品の開発を行っている。これまでに海外企業12社も含めて100社以上から136人の研究員が派遣されてきた。各研究員は2年以上もこの研究室で開発を続けて、開発成果を企業に持ち帰る。
これまで、当研究室と企業との共同研究成果としては、テレビの収録で使われている松下電器産業製のマイクロホン、自動車のヨーレート(スピン)を検出するトヨタ自動車製の振動ジャイロ、トキメック製の静電浮上回転ジャイロ、半導体テスター向けのアドバンテスト製MEMSリレーなど多数ある。まだ実用化はされていないが、パイオニアと一緒に研究しているものに高密度記録装置用のマルチプローブなどがある。
MEMS製品をうまく開発するには、設計から試作までのすべての工程に関して技術を熟知しなければならない。例えば、エッチング技術の知識がないと構造設計がうまく行えないし、ダイシングやパッケージングのことを考えながら、MEMS部分を保護する構造をウェーハプロセスの段階で作り込む必要がある。
MEMS製品の場合、1個でも試作できれば事業化が可能だと判断できる。しかし、企業が導入している製造装置は、大型かつ高価でデバイスの試作を行うには自由度が少なすぎて、研究開発にはあまり適さない。それに比べて、当研究室の設備は手作りで旧式の装置がほとんどだが、小型で柔軟性に優れており、研究員が試行錯誤しながらデバイスを試作できる。それによって、1人の技術者がMEMS製品の開発から試作までのすべての工程を学習できるというメリットがある。
MEMS分野は基本的な半導体プロセス技術に、機械や光、材料などにかかわる技術を組み合わせるものであり、応用分野を拡大するためには幅広い知識が必要となる。これらの技術情報を企業に提供し、活用してもらうことが大学の大きな使命の1つだと考えている。私自身、企業の方から年間おおよそ250件の相談を受けている。企業側は市場のニーズに基づいて必要な研究を行っているわけだが、その研究に役立つ新技術の情報や、問題解決につながる知識を提供している。その中には他社の開発事例なども含まれている。
当研究室は開発成果をオープンにして研究員同士で共有していくことを基本的な方針としている。これまでも、自動車関係では、トヨタ自動車やドイツDaimler社、米Ford Motor社などの競合メーカーからほぼ同時期に研究員が派遣されてきたこともあったが、常に情報はオープンにしてきた。
「社会に役立つ研究を行うことが誇りであり喜びでなければならない」というのが私の基本姿勢だ。研究するテーマを自ら選択していたのではなかなか研究分野は広がらない。できるだけ広い視野を持つためには、周りからの要求に応えながらその中で自分を磨くのもよい。
学生に対しては、「人生は成り行きだ」と話している。私も周りの方の誘いがあり、電子工学から精密工学に移って新しい研究テーマに出会い、自分の新しい世界を作ってきた。
また、学生にはいつも机に向かっているのではなく、「時間があれば実験室に行きなさい」と指示している。これは、新しく企業から派遣されてきた研究員にも常々言ってきたことだ。
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