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ナショナル セミコンダクター ジャパンは2008年1月、医療用超音波診断装置における画像処理用途向けの8チャンネルA-Dコンバータ「ADC12EU050」を発売した。分解能が12ビットでサンプリング周波数(fs)が50MHzでありながら、消費電力を350mWに抑えたことを特徴とする。この消費電力は、「競合他社品に比べて30%減」(同社)だという。
超音波診断装置の画像処理では、ローエンド機で32チャンネル、ハイエンド機ともなれば512チャンネルものA-Dコンバータを必要とする。機器自体の小型化、低消費電力化が求められているため、A-Dコンバータを多チャンネルにしたり、周辺部品を不要にしたりすることによる小型化や、低消費電力化が要求されている。同製品は、こうした要求に応えるべく開発された。
ADC12EU050の低消費電力化は、新たな変換方式を採用したことで実現した。通常、12ビット/50MHzクラスのA-Dコンバータでは、パイプライン方式が用いられる。それに対し、ADC12EU050ではコンティニュアスタイム(時間連続)ΔΣ方式を採用している。同方式を実用レベルで用いている製品は「業界初」(同社)だという。
パイプライン方式の場合、図1に示したようなスイッチドキャパシタ(SC)回路を多段に接続し、それらをfsレートで動作させる。SC回路ではキャパシタの時定数が変換速度に影響を及ぼす。つまり、高速化を図るには容量値を小さくする必要があるが、そうするとS/N比(信号対雑音比)が劣化してしまう。キャパシタをある程度大きくして高速化を図ろうとすると、消費電力を増やさざるを得ない。さらに、回路構成が複雑で小型化が難しく、またSC回路の前段のアンプは容量性負荷を駆動することになるので、消費電力の多いものを用いなければならない。
一方、ADC12EU050の変換方式の基本原理は、16倍オーバーサンプリングとΔΣ変調の組み合わせである。通常、ΔΣ変調方式のA-Dコンバータ(図2)では、積分器の部分を図1と同様のSC回路で構成することが多い。その場合、このSC回路をオーバーサンプリングレートで動作させることになる。つまり、fsが50MHzの条件で16倍のオーバーサンプリングを適用しようとすると、800MHzでの動作が必要となるわけだ。そのため、パイプライン方式の場合と同様に高速化と消費電力に関する課題を抱えることになる。
それに対し、コンティニュアスタイムΔΣ方式では、積分器として図3のようなアナログ積分器を用いる(加算処理もアナログ演算で行う)。それにより、SC回路が抱える上述した課題を解決できることになる。しかし、fsレートで動作するパイプライン方式とは異なり、この方式ではオーバーサンプリングレートで回路を動作させる必要がある。そのため、これまではΔΣ変調部の後段に配置するデジタルフィルタの実行速度/消費電力の問題やアナログ部のノイズの問題などから12ビットクラスの精度を低消費電力で得るのが困難であった。
ADC12EU050でコンティニュアスタイムΔΣ方式の実用化に成功した理由として、ナショナル セミコンダクター ジャパンは以下のような事柄を挙げた。
●0.13μmプロセスを採用したことにより、ロジック回路の高速化/低消費電力化などが可能になった
●800MHzのクロックを生成する低ジッターPLLのオンチップ化に成功した
●ΔΣ変調に用いる800MHz動作の低ビットD-Aコンバータの低ノイズ化に成功した
以上のような課題を解決した結果、12ビット/50MHzの条件で、信号対ノイズ+歪(歪)は68dB、S/N比は70dB(フルスケール時)を実現できた。チャンネル当たりの消費電力は44mWである。なお、オーバーサンプリング技術を用いることから、A-D変換部の前段に配置するアンチエイリアシングフィルタは低次のものでよい。ADC12EU050は、このアンチエイリアシングフィルタも内蔵している。
さらに、SC入力の場合、入力電圧範囲はチップの電源電圧の範囲内とする必要がある。それに対し、コンティニュアスタイムΔΣ方式の場合、電源電圧範囲以上の電圧を入力することもできる(電源電圧は1.2Vの単一電源だが、2.1Vpp入力が可能)。なお、入力レベルが範囲外になった場合に、fsレートの1クロックサイクル以内に飽和状態を修復する過負荷回復(instant overload recovery)回路も備えている。
パッケージは10mm×10mmの68端子LLPで、1000個購入時の単価は7500円。量産出荷は2008年第3四半期を予定する。
(飴本 健)
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