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半導体プロセスの微細化が進むことにより、チップの集積度や性能は格段に向上している。しかし、それに伴ってデバイスの設計が複雑さを増し、新たな手法を次々に導入しなければ、そのメリットを享受できなくなっている。2008年1月にパシフィコ横浜で開催されたEDA関連のイベント「Electronic Design and Solution Fair 2008(EDSFair2008)」では、この課題を解決することを目的とした製品が数多く出展された。ここでは、そのうちのいくつかをピックアップして紹介する。
フランスDassault Systemes社は、3DのメカニカルCADである「Solid Works」やPLM(product lifecycle management)ソフトウエアを提供していることで有名である。同社は、半導体分野に対しては、その設計フローをカバーするDDM(design data managemant:統合設計データ管理)ツール「ENOVIA MatrixOne Synchronicity DesignSync(以下、DesignSync)」を提供している。
DDMツールとは、簡単に言えば「設計データを管理するデータサーバーや、データのリビジョン管理機能、ネットワーク経由での設計データへのアクセス機能などを提供し、多人数、多拠点、多チームによる設計作業を効率化するもの」である。これと同様の機能を提供するものは、ソフトウエア開発の分野でよく使われており、バージョン管理システム(CVS:concurrent versions system)といった名前で呼ばれている。
このようなDDMツールが半導体設計の分野で求められる要因としては、半導体設計が大規模化したことと、各種機能の専門性が高まったことが挙げられる。例えばSoC(system on chip)などでは、モジュールやブロックごとに分割して設計されることが多い。また、分割された1つモジュールやブロックが複数の機能を持つ場合、個々の機能ごとに複数の設計チームがかかわることがある。加えて、IPコアの導入もこの分担作業というスタイルの採用を促す要因となっており、複数の会社による共同作業が必要となる場合もある。さらには、半導体ベンダーの統合/買収などによって開発拠点が世界中に分散するケースもあり、その場合には拠点間でのデータの共有が必須となる。
また、半導体設計において扱うデータの種類の多さも、DDMツールが求められるようになった要因の1つである。半導体設計では、1つの設計データがライブラリ情報、セル構造、物理レイアウトデータ、回路図など複数のファイルやディレクトリなどを含む。また、EDAツールも自動的に多くのファイルを生成する。そのため、サーバー上の設計データを手作業で最新版に更新するのは非効率であり、エラーの発生を招く要因ともなる。そのため、データ構造を自動的に解釈して設計データを統合的に管理するツールが強く求められているのである。
DesignSyncは、米Cadence Design Systems社や米Synopsys社のツールで作成された半導体設計データの構造を認識し、抽象度の高いデータ管理を可能にする(図1)。個々の設計データに含まれる複数のファイルやフォルダを1つの集合体として扱い、階層的なリビジョン管理を可能とする。また、1つの設計データが異なる複数の工程で使用される際に、その関連性を保存することができる。
半導体設計データのサイズは数ギガバイトにも及ぶことがある。このような巨大なデータを1つのサーバーで一元管理した場合、複数の拠点に点在する個々のエンジニアが設計データをコピーするだけでも時間がかかり、作業効率が低下してしまう。またその際にネットワークインフラにかかる負荷の大きさも無視できない。こうしたことを解消するために、DesignSyncはサーバーの分散配置にも対応している。具体的には、各サーバー間におけるデータの同一性を自動的に保つ機能を備える。サーバーを分散配置することにより、各拠点の設計者はローカルサーバーからデータをコピーすることが可能になり、作業時間の削減とネットワーク負荷の軽減を実現できる。
またCadence社/Synopsys社以外のメーカーのEDAツールで用いられているデータ構造を認識できるようにカスタマイズするCTS(custom types system)機能も提供している。
Dassault社のENOVIA MatrixOne部門でプロダクツマーケティングマネジャを務めるPeter Haynes氏は、「DesignSyncは、世界で130社の半導体/IPベンダーに採用されている。だが、日本では5、6社が小規模なユーザー数で運用しているのみだ」という事実を明かした。この原因として同氏は、「日本では、手作業で履歴を管理することが可能なくらい全般にわたって業務を熟知した人材が長く携わっていることと、設計拠点が分散化していないこと」の2点を挙げた。同氏は「履歴の管理は、設計者がきちんとやっていれば問題はない」としながらも、「半導体業界の再編によって設計者の流動性が増した場合、機械的な手法で履歴を管理できる手法が必須となる」と指摘した。その上で、「今後、さらなるプロセスの微細化によって、設計の大規模化が加速する。日本においても分担作業のスタイルが広まり、遠隔地開発も増えるだろう。また、ブロックの設計を外部業者に発注した際、現在はその設計完了を待った後に、デバイス全体の設計を統合しているようだ。だが、設計の効率化を実現するには、並行開発が求められるようになるだろう。その際には、DDMが必須になる」と述べた。
Dassault社は2008年1月、「ENOVIA MatrixOne 10.8」を発表した。同社が「PLM 2.0」と呼ぶオンラインでの共同作業を、専用ソフトウエアを用いた手法からウェブブラウザベースの手法に置き換えることを可能にするプラットフォームである。これによって、ウェブブラウザさえ用意すれば、誰でもアクセスできるPLMソフトウエアを実現可能になるという。同社はこのプラットフォームをベースとした製品の開発を予定しており、DesignSyncも今後、このプラットフォームをベースにしたものに変更されると見られる。
米Calypto Design Systems社は、クロックゲーティング技術をロジック回路に適用するツール「PowerPro CG」を国内で始めて展示した。同社はこの製品を2007年に発表していたが、海外での実績が得られるまで、日本国内における営業活動を延期していた。海外で同ツールを用いて消費電力を削減した製品事例が得られたため、国内での正式な営業活動を開始したのだという。
PowerPro CGは、Verilog HDLやVHDLで記述されたRTL(register transfer level)コードを解析し、クロックゲーティング回路の挿入をサポートするソフトウエアである。このクロックゲーティング回路の挿入により、デバイスの消費電力を削減できる。例えば、3Dグラフィックスデバイスの内部のあるモジュールでは、約6割も消費電力を削減できた。国内においても非常に多くの引き合いを得ており、「近々大幅に消費電力を削減した日本製品が市場に出荷されるだろう」(同社)としている。
Calypto Design Systems社はSystemCなどで記述されたシステムの機能記述とRTLコードとの等価性を検証するソフトウエア「SLEC」の新版も発表した。同製品に新たに「SLEC System-HLS」モジュールを追加することで、コードのより高度な構文解析が可能になったという。従来製品では、C/C++/SystemCコードにおける動的なメモリーアロケーションの使用個所や特殊なポインタ構文を解析することができなかった。そのため、従来は同製品が解釈できるように動的メモリーアロケーションの構文をメモリーの使用量をあらかじめ定義する構文に変更するなどの手直しが必要だった。だが、これではC言語を採用する理由の1つであるハードウエア記述の容易化というメリットが失われてしまう。また、手直しを行うことにより、エラーを誘発する危険性もある。SELC System-HLSによってこのような手直しが不要になるので、設計者はより自由にコードを書くことが可能になる。
ドイツOneSpin Solutions社は、RTLモジュールの検証ツール「OneSpin 360 MV(以下、360 MV)」を更新し、標準アサーション言語である「SystemVerilog Assertions(SVA)」とこれに対応したライブラリ「Open Verification Library(OVL)」のサポートを追加した。モジュール単位でRTLコードを検証するソフトウエアである。新機能によって、RTLコードの動作仕様を表すアサーションを標準言語で記述して検証が行えるようになった。具体的には、RTLコードとアサーションを解析し、いずれかに出力の定義が不明確な部分があればそれを指摘する。その部分に対して新たなアサーションを定義するかRTLコードを修正するかという変更を促し、不明確な部分をしらみつぶしにしていくというものだ。これにより、設計者が意図していない出力や、検証担当者が記載し忘れた定義をなくし、完全なモジュールとすることが可能になる。
360 MVの従来版で利用できるアサーション言語は、OneSpin社独自のものであった。そのため、ほかのツールで作成されたアサーションを利用したり、同製品で作成されたアサーションをほかのツールで利用することができなかった。新版で標準のSVA/OVLに対応したことにより、こうした問題が解消される。
OneSpin社は、2005年5月に設立され、2007年11月に日本オフィスを開設した比較的新しい会社である。同社社長兼CEO(最高経営責任者)のPeter Feist氏は、「すでに海外では10社以上に製品を提供している。日本オフィスはまだ開設したばかりで製品を購入したユーザーはないが、現在、8社で評価してもらっている」と述べた。日本人のフィールドアプリケーションエンジニアを2名採用し、国内における営業活動を本格化している。
(小野 明久)
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