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続いて、実際のオーディオシステムではかなり重要なD-A変換におけるジッターの影響を実験結果から確認する。図5に示したのが、実験に用いたシステム構成である。
この実験では、ジッターがアナログ信号に与える影響を知るために、以下の2点に注目することにした。
●DIRの違い
●インターフェースの違い(同軸接続と光接続)
これらに注目した理由は、このようなシステムにおけるジッター発生の主要因がこの2つであるからだ。なお、DIRの比較には、筆者らが開発した「DIR9001」と、データシートにジッター性能が規定されていない競合他社製品を使用した(以下、A社DIRと表記する)。DIR9001のジッターは、光接続でも同軸接続でもほとんど差はなく、実測値は40ps以下である。一方、A社DIRのジッター実測値は、同軸接続では240ps、光接続では900psであった。
表2に、D-Aコンバータのアナログ出力における一般的なオーディオ性能の実測値をまとめた。このように、DIRや接続方法の違いだけでオーディオ性能に差が現れる。特に注目すべきは、接続方法によるオーディオ性能の違いだ。デジタル伝送では、その品質は劣化しないと思われがちだが、この結果が示すように、ジッターによってこれほどまでにもオーディオ性能に差が出るのである。
この点について詳細に調べるために、DIRによってリカバリされた後のシステムクロック(24.576MHz、512fs、fs=48kHz)のスペクトラムを測定した。以下に、その結果をまとめる。
●オーディオ信号の有無による影響
図6と図7は、DIR9001における同軸接続時のスペクトラムである。図6はオーディオ信号が存在する場合で、図7は存在しない場合だ。両者を比較するとほとんど差はなく、クロックの質がオーディオ信号の有無に依存していないことが分かる。
一方、図8と図9は、DIR9001における光接続時のスペクトラムである。図6、7と同じく、オーディオ信号の有無という点が異なる。光接続時には、オーディオ信号が存在すると、クロックの質に若干の劣化が見られる。この劣化分は、時間領域でのジッター量の測定では有意な差には見えないのだが、周波数領域ではその差が見てとれる。
図10と図11は、A社DIRにおける同軸接続時のスペクトラムである。こちらは、オーディオ信号の有無により、かなり大きな差が見られる。図10から、オーディオ信号が存在する場合には、クロックやスプリアスのスペクトラム近傍にサイドバンドが存在することが分かる。これは、オーディオ信号により、クロックに変調が発生していることを表している。
図12と図13は、A社DIRにおける光接続時のスペクトラムである。この場合も、図10や図11と同様の傾向が見られる。
ここで、実際に機器を使用する状態について考えてみる。オーディオ機器は音楽を楽しむためのものである。すなわち、実使用状態ではオーディオ信号は必ず存在し、その周波数や振幅は刻々と変化する。その一方で、クロック信号はオーディオ信号とは無関係に常に一定の時を刻む必要がある。従って、クロックの品質がオーディオ信号によって悪化することがあってはならない。このことはDIRにも当然当てはまる。リカバリ後のクロックの質がオーディオ信号に依存しないことは、オーディオ品質の劣化を防ぐために非常に重要なことである。
●光接続ではジッターに注意
どちらのDIRにもいえることだが、上で示した結果から、光接続時のクロックの質は、同軸接続時のそれに比べて明らかに劣ることが分かる。この結果は、光伝送路(電気‐光/光‐電気の変換器を含む)において、大きなジッターが付加されることを示している。一般的に、「光接続は同軸接続に比較して音質が劣る」といわれる。これについては、「いや、同じデジタル伝送なのだから、音質に差など出るわけがない」と反論する人もいる。しかし、本稿で示した結果は、実際に伝送路の違いで音質に差が出ることを、クロックのジッターの差で実証している例の1つだといえよう。
DIRは単なるデジタルICとして見られがちであるが、クロックの質に注目して評価を行うと、製品間には大きな性能差が存在することが分かる。このことがオーディオ性能と音質に、非常に大きな影響を与えるのである。
4 アナログ領域で何が起きるのか
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