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製品例に続き、プリンテッドエレクトロニクス分野を支える製造技術が現在どのような状況にあるのかを見てみよう。
●プリンタ技術
特殊なインクカートリッジを用いることで、比較的安価なデスクトッププリンタによって、多くのプリンテッドエレクトロニクス製品(あるいはそのプロトタイプ)を製造することができる。
富士フィルム(米FUJIFILM Dimatix社)のプリンタ「DMP-2800」シリーズを使えば、使い捨ての圧電性カートリッジを用いて、8インチ×11インチ(約20.3cm×27.9cm)の大きさのあらゆる基板に流体材料の層を沈着させることができる(図4)。このプリンタには、高さを調整可能な約200mm×300mmのプリント領域があり、最大5080dpiの解像度で印刷が行える。サーマルインクジェットとは異なり、圧電性のプリントヘッドは、溶剤、水溶液、紫外線硬化液などのさまざまな材質に適用可能である。また、システムが備える波形エディタにより、ユーザーがプリントヘッドへの電子パルスを操作することで、ノズルから噴射されるインク液滴の形状の最適化が行える。16個のノズルを持つドロップオンデマンド方式のインクジェットカートリッジは1~10pl(ピコリットル)の公称液滴量に調整でき、インクの詰め替えも可能である。
DMP-2800シリーズは、プリンタ本体、プリントカートリッジ備品、ドライバおよびアプリケーションソフトウエアで構成される。価格は3万米ドル未満から。
●配線用の技術
本稿で紹介したものを含め、すべてのプリンテッドエレクトロニクスでは、さまざまな導電性の液体を利用して部品間の配線が行われる。そのインクの抵抗値は比較的高い。多くの分野ではそれでも構わないが、抵抗値がかなり低いことが要求されるケースもある。そのため、導電性を高めるために銀粉末を混ぜた液体が用いられたこともあった。しかし、この方法では粒子を溶解するために圧力か熱が必要になる。
この問題を解決するために、米NovaCentrix社は、電子デバイスの高速プリント用インクとその調合方法を開発した。同社の「Metalon」プロセスでは、銀と銅のナノ粒子を用いることにより、低温の基板に電子回路を直接プリントする。適用分野として考えられるのは、RFIDアンテナ、トランジスタ、太陽電池の接点、ディスプレイのバックプレーン、静電気放電/電磁気干渉フィルムなどである。
NovaCentrix社は、金属ナノ粒子ベースのフィルムを、キセノンフラッシュランプからの波長が短く強力な光のパルスに露出することにより、硬化または焼結するという新しい技術を有する。この光硬化技術により、迅速かつ選択的にナノスケールの金属インク粒子を加熱/溶解し、導電性の高い配線を形成することができる。
●メモリー用の製造技術
不揮発性メモリーは、プリンテッドエレクトロニクス業界の中でも最も成長が期待できる分野である。柔軟性を持った素材で構成したメモリーを採用した製品としては、ユーザーに表示するために情報を保存するインテリジェントパッケージやゲームカード、医療機器などがある。その他の応用分野としては、詐欺や摸造の防止を目的としたセキュリティタグがある。この場合、再書き込み可能なメモリーに製品識別情報やセキュリティ情報を格納する。
スウェーデンのThin Film Electronics社は、プリンテッドエレクトロニクスを用いた同社の不揮発性ポリマーメモリー技術向けに、低コストの量産プロセスを開発中である。同社の薄膜メモリーには、強誘電性かつ不揮発性で書き込み可能なポリマーが間に挟まった上下のプリント電極がある。同社の技術では、メモリーセル内のトランジスタが不要であり、ほかのメモリーと比較してかなり簡単な構成となっている。
●電池技術
プリンテッドエレクトロニクスの応用分野では、多くの場合、信頼性の高い電源が重要な要素になる。アプリケーションを起動するまではアイドル状態にある、プリントエレクトロニクスを用いた電池がその代表的な例となる。
そのような電池を開発しているメーカーに、イスラエルのPower Paper社がある。同社の電池は金属ケースを必要とせず、ほとんどのフレキシブルな材料にプリント可能となっている(図5)。電池寿命は約3年程度で、亜鉛と二酸化マンガンのプリント層によって陽極と陰極を形成している。同社はこの技術を社外にライセンス供与している。
Power Paper社は、肌への有効成分の浸透を促す薬用/コスメティック用パッチへの電力供給にもこれらの電池を利用している。これらのパッチは、肌のダメージ、加齢、しわ、色素沈着、光によるダメージなどを対象としたものである。
プリンテッドエレクトロニクスは、回路設計エンジニアの役割を大きく拡大する可能性を秘めている。従来エレクトロニクスとは無縁だった業界でも、製品パッケージや標識に新しい機能を追加するために、プリンテッドエレクトロニクスを利用するようになるかもしれない。
シリコン部品は、コストが最も安いものでもプリント部品よりかなり高価である。また、新しいインク技術も常に開発されている。こうしたことから、使い捨て型電子製品の飛躍的な成長は十分に期待できる。また、書籍、新聞、雑誌などの印刷物が減ることで仕事を失ってしまう多数の印刷業者にとっても期待がかかる分野だといえる。
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