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2007年2月12日~15日にスペインのバルセロナで携帯電話に関する最大級の展示会「3GSM World Congress 2007(以下、3GSM)」が開催された。3GSMでは、特に注目を集める新技術はなかった——こういうと語弊があるが、むしろ、チップレベルの集積化技術や、HSDPA(high speed downlink packet access)、WiMAX(worldwide interoperability for microwave access)のような高速無線ネットワーク技術の具現化手段、携帯電話機を携帯型コンピュータ機器に変化させる手法など、以前から取り組みの続いている技術の強化が目立った。ここでは、WiMAXに関連するベンダーの動きに注目してリポートする。
3GSMには、WiMAX技術を推進する企業が多数参加した。例えば、米Intel社やMotorola社、韓国Samsung Electronics社、富士通などである。同技術を推すこれらの企業は、ケーブルやDSL(digital subscriber line:デジタル加入者線)、無線LAN(WiFi)を代替/補完するIPベースの無線ブロードバンド技術としてのWiMAXが、将来のものではなく現実のものであることを強調した。
「WiMAX is here」と書かれた巨大な横断幕の下、Intel社とMotorola社、Samsung社、フィンランドNokia社、米Sprint Nextel社は共同で、SISO(single input single output)モードで動作するIEEE 802.16e-2005のWave1(以下、モバイルWiMAX Wave1)を利用したデモを行った。そのデモでは、テレビ会議や、米MobiTV社のモバイルテレビサービス、インターネット接続などが実演された。
ブースに配置されたIntel社の説明員は、「2008年に、当社はパソコン向け『Centrino』チップをWiMAX対応とする予定だ。現在の無線LANと同様のことが実現できるようになる」と説明した。同社のWiMAX対応は、Sprint社が米国で展開する予定のWiMAXサービスの開始と同時期になりそうだ。Sprint社は、2007年末までに、米国の複数の地域でWiMAXサービスのトライアルを実施し、2008年に1億人規模のネットワークを構築することを目指している。同社は、Intel社、Motorola社と提携しており、同じく提携企業の米Samsung Telecommunications America社がインフラ装置の多くを納入している。
Sprint社は、今後2年間のネットワークインフラ構築に向けて、30億米ドルを用意した。同社は、「現在のサービスと同じ2.5GHzの周波数帯を使って運用する予定」としている。
別の会場では、富士通の電子デバイス販売子会社であるドイツFujitsu Microelectronics Europe(FME)社がブースを構え、IEEE 802.16e-2005のWave2(以下、モバイルWiMAX Wave2)に対応した最新チップを展示していた。このモバイルWiMAX Wave2はMIMO(multiple input multiple output)をサポートする。製品認証が2007年の後半に計画されているSISOベースのモバイルWiMAX Wave1に比べて、通信距離とデータスループットの面で大幅に上回る。
富士通のチップは、MAC(media access controller)層とPHY(physical layer)層に対応する90nm/1チップのミックスドシグナルベースバンドプロセッサであり、MIMOをサポートしている。同チップは、WiMAX Forumで規定された帯域の2.5GHzおよびその他の周波数帯で動作する。富士通は同チップをPCカード向けとし、次世代以降のチップを携帯電話機などの小型携帯機器向けに改変する予定だ。
3GSMで富士通は、USB 2.0ケーブルを介し、このチップを組み込んだ評価ボードをノート型パソコンに接続してデモを行った。このチップがいずれPCカードやその他のWiMAXターミナルに組み込まれれば、ケーブルは不要になる。会場で行われたデモでは、サーバーに格納されたビデオクリップを、クライアントターミナルとして機能するWiMAXチップ搭載の評価ボードを介してパソコンに転送して見せた。18M ビット/秒のビデオストリーミングを実演することで、モバイルWiMAXがHSDPAの最大通信速度(14.4Mビット/秒)を上回ることを実際に示した。
富士通は、WiMAX Forumの設立メンバーとして2003年からWiMAXに取り組んできた。IEEE 802.16d-2004(固定WiMAX)対応のチップは2006年1月から量産している。
富士通の固定WiMAXチップにはRF部は含まれない。これは同社の戦略の一部だろう。「こうすれば、RF部を多くのサードパーティとその国の周波数範囲に合わせて変えられる」とFME社の通信事業部門でシニアプロダクトマーケティングエンジニアを務めるJurgen Gandowitz氏は説明する。「ロシアやほかのエリアでは5.xGHz帯が好まれるようだが、欧州では3.5GHz帯に対する要求が強い」という。
この固定WiMAXチップは2GHz~11GHzで動作する。Gandowitz氏は、「同様の柔軟な選択性を、モバイルWiMAXチップにも組み込む」と付け加えた。モバイルWiMAXの場合、「どの周波数帯が世界で要求されるかによるが、まだ規格が確定していない」(同氏)という。
富士通は、2007年第3四半期までに、完全なMACソフトウエアを含め、PCカード用リファレンスキットとSoC評価ボードの両方に向けて、MIMOベースのモバイルWiMAXに対応する最初のチップの出荷を始める予定だ。Gandowitz氏は、「そうすることで、ODMベンダーがモバイルWiMAX Wave 2に対応するPCカードの生産をすぐに始められるし、システムインテグレータは当社のチップを使ってシステムや製品の開発に着手できる」と説明した。さらに同氏は「富士通はすでに、同チップの第2、第3世代について明確な構想を持っている」と語った。予想されるのは、集積度を高めて消費電力を削減したチップの登場だ。「第3世代までに、携帯電話機への搭載に向けて、超低消費電力チップを実現することを目指している」と付け加えた。
Samsung社は現在、韓国ソウルで行われているWiBro(wireless broadband)の商用トライアルに参加している。WiBroとWiMAXの関係については当初、混乱があった。しかし、WiMAX Forumが、「WiBroは、モバイルWiMAXの標準規格であるIEEE 802.16e-2005をベースとするもの」と述べたことで問題は収束に向かった。現在、WiBroは「韓国におけるモバイルWiMAXサービス」のことを指す。
Samsung社は2006年6月から、Sprint社などの通信事業者が行う商用トライアルへの参加を始めた。こうしたトライアルへの参加が、同社をWiMAX用ICやインフラ装置、端末機器の開発で主導的地位に導いた。
ソウルでのトライアルはSISOベースのモバイルWiMAX Wave1サービスを使用しているが、Samsung社は3GSMのブースでMIMOベースのモバイルWiMAX Wave2の設定によりデモを行った。「通信速度は約35Mビット/秒」(同社)で、WiMAXチップを搭載したPCカードを多くの携帯端末やノート型パソコンに装着し、映画やMP3オーディオのデータをダウンロードして見せた。
WiMAXを支える技術の開発は進んできているが、特に先進地域ではすべてが順調というわけではない。英Informa Telecom&Media社は、「WiMAXを普及させようとするに当たり、すでに定着した固定ブロードバンド通信事業者との過酷な競争に直面することは容易に予測できる。固定ブロードバンド通信事業者は簡単には加入者を引き渡さないだろう。一方で、携帯電話事業者がHSDPAなどのブロードバンド技術を導入してWiMAXを迎え撃つ準備をしている」と指摘した。
WiMAXへの対抗姿勢は3GSMでも強調された。英Vodafone Group社のCEOを務めるArun Sarin氏は、GSM協会に対して、UMTS向けの最適な3G技術を見極める研究開発レベルの取り組み「3GPP LTE(long term evolution)」を加速させるよう促した。Sarin氏は3GSMの基調講演の中で、「WiMAXは商用化が現実的な段階に来ているが、LTEはまだ標準化されていないということを理解しておく必要がある」と指摘した。
(John Boyd:EDN Japan特派員)
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