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電磁界解析ツール
活用のススメ

[issued: 2007年4月号]
電磁界解析ツール活用のススメ

従来、SPICEは回路シミュレータとして広く使われてきた。しかし、電子デバイスや電子機器の高周波化/高密度化が進んだ結果、その限界が問題となってきた。SPICEでは、比較的単純な回路に対してさえも、電磁界の影響による振る舞いの詳細を検証することが困難なのだ。この問題を解決し、信号品質の検証や高周波ICの設計などで威力を発揮するのが電磁界解析ツールである。

Paul Rako

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SPICEの限界

 SPICE(simulation program with integrated circuit emphasis)*1)*2)は、電子回路の動作解析に有用なツールである。その解析は主に時間領域で行われ、微小な時間ステップごとに電圧と電流を計算する。その結果をオシロスコープと同様な波形として出力するのが基本機能だ。

 設計者にとって有用であるはずのSPICEだが、実は設計者の頭痛の種にもなっている(別掲記事「SPICEの問題点」を参照)。このことは、5本のSPICEシミュレータのうち、1本しか現実の回路動作に適合する結果が出せなかったという例からうかがえる*3)

 なぜこのように現実とシミュレーションとの間に差があるのだろうか。この差は、SPICEでの入力が回路図を基にしたものであることに起因する。SPICEでは、モデルとして近似した計算式と、回路素子を寄せ集めたものとして回路を扱う。この近似式には、実際の回路に現われるすべての物理的な対象や現象に関する情報が含まれているわけではない。最も大きな問題は、電磁界の影響を正しく盛り込むことができないことである。

 SPICEによって、回路素子だけでなく伝送線路も含めて解析することも可能ではある。だが、その場合にも、伝送線路は伝送線路そのものとして取り扱われるわけではなく、線路長に対応した集中定数回路として扱われる。つまりSPICEでは伝送損失特性を電磁界の影響も考慮した物理現象や分布定数として計算するのではなく、簡単なパラメータで定義された損失特性式に基づいて計算を行うのである。言い換えれば、SPICEはプリント基板のレイアウトや信号ライン間の干渉といった現象も含めて解析可能なものではないのだ。また、SPICEで表皮効果などの物理現象を取り扱うことも可能だが、その際には伝送線路の場合と同様の手法が用いられる。大事なのは、SPICEでのモデル化は、あくまでも近似的なものであるということだ*4)*5)

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SPICEの問題点

 SPICEは強力なツールであり、扱いにくい問題にも適用できる。SPICEの基本的な機能の根幹にあるのは、時間領域でキルヒホッフの公式を解くことである。SPICEでは、回路ネットリストからコンダクタンス行列を生成し、行列演算を用いて計算を行う。計算の進め方としては、1つ目の時間ステップにおいて計算を繰り返し、結果が正解に十分近いと判定できると、次の時間ステップに進むということを繰り返す。SPICEでは、抵抗/インダクタ/コンデンサなどの単純な受動素子が直列/並列に接続されたネットワークとして回路をモデル化する。このモデルは温度による影響も表現する。能動素子は受動素子の組み合わせとしてモデル化し、それに可変電圧源と可変電流源を組み合わせる。また、ノイズの印加など直接モデル化しにくい現象/効果は、仮想素子を用いた式によって与えることができる。

 SPICEの問題点は、解析結果の良しあしがモデルの良しあしによって決まることである。ICの設計者はSPICEに頼っているが、その結果が現実には起こり得ないようなものであることは珍しくないし、基板の設計者もSPICEに不満を感じたことがあろう。そのような経験を持つ人が多いことから、SPICEの出す解析結果の妥当性、SPICEそのものの有用性について疑問が呈されることが多くなっている。

 ICの設計部門は、現実のトランジスタや受動素子の動作によりよく適合するモデルを入手しようと、数十~数百万米ドルもの費用を払っている。このような努力にもかかわらず、動作温度や高密度配置の影響によって、ICの特性を予測することが困難になっている。

 米National Semiconductor社のBob Pease氏は、「SPICEには何度もだまされたし、明らかに間違っている解もあった。SPICEの結果がどうであれ、それを信じ込むのは良くない。設計者はとにかく頭を使わなければならない。シミュレーションではなく、紙と鉛筆を使うのだ。SPICEの結果が正しいこともあるが、回路がどのように動作するのかについて自分自身で解析し理解しなければ、正しいのかどうかも判断できないだろう」と述べる。

 設計者はSPICEの解析結果を十分に吟味し、予期しない結果があれば、その妥当性を十分に検討しなければならない。

 SPICEは線形性を前提として行列計算を行うが、ダイオードやトランジスタの特性は本質的に非線形である。また、特にダイオードでは指数関数的な電流/電圧特性を扱うため、電流/電圧の動作点がわずかに狂うと、それ以降の計算結果が大きくずれることになる。このような計算が時間ステップごとに繰り返されると、結果が収束しない確率も高くなり、最終的にシミュレーションが「収束エラー」のメッセージで終了することになる。SPICEによってトランスのような非線形磁気素子を解析する場合には、このような収束性の問題がさらにクローズアップされることになる。

脚注:
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