Green Power SolutionTop Story バックナンバー > 進化するDC-DCコンバータ 設計の容易性も追求した電源ソリューション

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絶縁型電源の小型化と高信頼性を同時に実現
~進化を遂げたフライバックコンバータIC~

絶縁型電源の設計者は、「トランスの設計が大変」、「部品点数が多い」、「フォトカプラを用いると長期信頼性に不安」といった悩みを抱えていることが多い。このため、新たな絶縁型電源の設計を行なう場合でも、過去の設計資産を再利用することが多いようだ。それだと、必要な仕様に対して電源の形状が大きくなったり、オーバースペックになったりするなど、機器メーカーにおいては課題も多かった。リニアテクノロジーのフライバックコンバータIC「LT3573」は、絶縁型電源の設計を簡素化でき、小型化と高い信頼性を同時に実現することが可能なICである。
フォトカプラが不要
写真1 LT3573の評価ボード
 絶縁型電源にLT3573を用いる利点の1つがフォトカプラを不要にしたことである。フォトカプラには経年変化による特性劣化という課題がある。LT3573はフォトカプラを使わずに済むために、この問題を解消することができ、電源モジュールとしての長期的な信頼性を確保することができるようになった。このような特徴から、PLC(Programmable Logic Controller)や表示器、画像処理装置などの産業機器用電源、電気自動車/ハイブリッド車に利用されるインバータ装置用電源などの用途に適している。

 LT3573は、1次側フライバック電圧検出手法を採用し、バウンダリ・モード動作と組み合わせることにより、2次側の出力電圧の情報を得ている(図1、図2)。この方法を用いると、従来方式で出力電圧を制御するために用いていたフィードバック回路用のフォトカプラや3次巻線が不要となる。これによって、部品の経年変化やコスト高、電源モジュールの形状や重さなど、これまでの課題を解消することができる。
図1 5V絶縁型フライバックコンバータ

図2 バウンダリ・モード動作と1次側フライバック電圧検出手法

 具体的には、2次側の出力電圧に応じて1次側に発生するフライバック電圧(フライバックパルス波形)を監視することで2次側の電圧を制御している。そしてLT3573はバウンダリ・モードと呼ぶ方式で動作している。バウンダリ・モードとは、2次側の電流がゼロになったことを検知して、次のサイクルのためのスイッチング素子をオンにするゼロ電流スイッチである。2次側の電流がゼロになる瞬間のフライバック電圧を利用するため,出力電圧が2次側の回路インピーダンスの影響を受けない。また、各部の損失が低減するためスイッチング周波数を上げることができる。このため、小型トランスの利用が可能となる。例えば、連続電流モードによる同等性能の電源モジュールに比べて、体積を約半分にすることができる。

石田 浩史 氏
リニアテクノロジー株式会社
大阪支社 支社長
 リニアテクノロジー大阪支社の支社長を務める石田浩史氏は「『長期信頼性を確保するためフォトカプラは使いたくない。かつ一次側ICのみで出力を精度よくレギュレーションしたい』、『コスト、信頼性の面で使用する部品はできるだけシンプルにしたい』といったお客様にLT3573は最適です」と話す。

 LT3573は、入力電圧範囲が3V~40V、出力電力は最大7Wである。ロードレギュレーションは入力電圧が12Vおよび24Vの場合、出力負荷電流の変動に対して出力電圧の変化は±1%以内に収まっている(図3)。なお、標準的な用途において、広い入力電圧範囲と出力負荷電流範囲にわたって、±3%の出力安定性を実現している。動作温度範囲は-40~125℃で、標準的な出力電圧と温度の特性を図4に示す。製品群として、出力電力が3.5Wの製品LT3574もリリースされたばかりである。
図3 ロードレギュレーション 図4 標準的な出力電圧と温度の特性

バウンダリ・モードの特徴を生かす
古川 敦彦 氏
リニアテクノロジー株式会社
大阪支社
フィールドアプリケーションエンジニア マネージャ
 LT3573は、バウンダリ・モードを採用することによって大きく3つの特徴を得ることができた。1つ目は電流がゼロとなってからスイッチングしているため損失が少なく、スイッチング周波数を上げることができる。その結果、小型のトランスが使用できる。2つ目は固定周波数発振ではないので、デューティサイクルが高いときの低周波発振の心配がない。リニアテクノロジー大阪支社のフィールドアプリケーションエンジニア マネージャを務める古川敦彦氏は「この特徴は特に、入力電圧が変動するアプリケーションに適しています」と語る。3つ目はノイズが小さいことである。バウンダリ・モードでは2次側の電流がゼロになってからスイッチングするため、2次側のダイオードに逆流が生じない。2次側に電流が残っていると、スイッチングしたときに2次側の電流が瞬時ではあるが逆流し、そのダイオードからEMI放射ノイズが発生してほかの電子機器に影響を与える可能性がある。

 一方、従来の電源モジュールでは出力電圧を検知していたため、トランスの後段(2次側)にあるダイオードのVF(順方向電圧降下)を気にする必要はなかった。これに対して、1次側のフライバック電圧を利用して出力電圧を制御する今回の方式では、同ダイオードの温度特性によって出力電圧が変わることがある。この温度による出力変動を極力抑えるために、LT3573ではこのダイオードの温度特性と逆方向の温度特性を持つ温度補償回路を内蔵し,温度による出力電圧変動を抑えている。2次側にあるダイオードとの温度特性の調整は、外部に接続する抵抗で行なうことができる。
トランスの選択も容易に
 トランスの選別も容易に行える。リニアテクノロジーでは、トランスの選別に必要な計算方式や推奨トランスを明示したデータシートを提供している(表1)。現在のデータシートに表記されているトランスメーカーは外国企業のみだが、石田氏は「現行のデータシートには記載されていない日本メーカー製の推奨トランスも随時追加していきます。対象となる推奨トランスについては当社に問い合わせていただきたい」と話す。これから商品化される同ファミリーICのデータシートには日本メーカー製の推奨トランスも記載される予定である。

表1 推奨トランスの一部

 PWM制御のフライバック電源はトランスの設計が難しかった。バウンダリ・モードのLT3573を用いることでトランス設計が容易となり、「機器メーカーによる絶縁型電源の内製化が進むでしょう」(古川氏)。

 LT3573を応用した絶縁型電源の一例として、電気自動車やハイブリッド車のインバータ回路に搭載されるIGBTのゲート電極用途などを挙げることができる。このアプリケーションでは小型で長期信頼性を実現できたことが顧客に高く評価されているようだ。

Resource Center
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