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pulse
2006.11
普及へ向け加速する各社のモバイルWiMAX対応
 WiMAX(worldwide interoperability for microwave access)は、数ある無線通信規格のうちの1つだ。そのカバー範囲から、同規格は携帯電話とWiFi(IEEE 802.11a/b)の中間に位置するものだと考えることができる。携帯電話がWAN(wide area network)、WiFiがLAN(local area network)のためのものだとすると、数kmの伝送距離をサポートするWiMAXは、MAN(metropolitan area network)をターゲットとしたものだともいえる。このWiMAXをめぐる各社の動きが活発化してきた。


高まるモバイルWiMAXへの期待

 WiMAXは、光ファイバ網などから加入者の端末までのラストワンマイルをつなぐものとして期待されている。その際の利用形態に応じて、WiMAXの規格は以下の2つに分かれている。
  • 固定WiMAX(Fixed WiMAX):固定端末での利用を前提とし、最大伝送速度は約70Mビット/秒。IEEE 802.16-2004として規定されている
  • モバイルWiMAX(Mobile WiMAX):移動端末での利用を前提とし、最大伝送速度は約20Mビット/秒。IEEE 802.16e-2005として規定されている
デモに使用された移動局の試作機。
PCカードの試作機も展示された。
図1 KDDIのWiMAX試作機
 特に、後者のモバイルWiMAXは、120km/h程度の移動にも堪えることから、“第4世代携帯電話”として期待をかける向きもある。しかし、WiMAXの国内での普及に関してはまだ先が見えていない。
 WiMAXで利用する搬送周波数帯としては、2.3GHz、2.5GHz、3.3GHz、3.5GHz、5.8GHzが候補になる。例えば、韓国では、すでにモバイルWiMAXをベースとした商用サービス(WiBroと呼ばれている)が普及しつつある。WiBroでは2.3GHz帯を使用し、上り/下りがそれぞれ6Mビット/秒、20Mビット/秒の転送速度を実現している。日本では2.5GHz帯が使用される見込みだが、まだ総務省による決定を待っている段階だ。
 そうした中、2006年10月3日〜7日に開催された「CEATEC JAPAN 2006」では、KDDIがモバイルWiMAXを利用したデモを披露した。搬送周波数として2.5GHz帯を使用、それに対応した基地局と移動局を用いて、インターネットへ接続するデモ、ならびにH.264対応の高品質映像コンテンツを5Mビット/秒でストリーミング配信するデモが行われた(図1)。
 併せて、同社は「シームレスハンドオーバー」のデモも行った。これはEV-DO網による200kビット/秒程度の通常映像と、モバイルWiMAX網による高品質映像を継ぎ目なく切り替えるというものだ。異なる無線システム間のハンドオーバーでは、通信レートや遅延時間などの違いによって通信が途切れたり途絶したりする。シームレスハンドオーバー技術では、サーバー側でそれぞれの無線システムに応じた品質の映像データを用意し、それを複数の無線システムに同時に送信する。一方、移動端末側には、ハンドオーバー時の遅延時間の差を吸収するための仕組みを盛り込む。これにより、継ぎ目のない切り替えを実現している。
 KDDIは、当初モバイル型のパソコン向けカード型端末をターゲットとして技術開発を進める。最終的には、携帯電話端末に搭載できるようなモバイルWiMAX技術を確立したい考えだ。


対応製品が続々と登場

 2006年10月には、米国ボストンで「WiMAX World Conference & Exposition 2006」が開催されたこともあり、WiMAXに関する発表が相次いだ。例えば、米Intel社はWiMAXに対応したベースバンドLSI「Intel WiMAX Connection 2250」を発表した。また、フィンランドのNokia社は、WiMAX向けの基地局「Nokia Flexi WiMAX Base Station」を発表するとともに、2008年にはWiMAXに対応した携帯端末を導入する計画を明らかにしている。さらに、富士通グループは北米におけるWiMAX対応戦略を発表した。
 以下では、固定WiMAX/モバイルWiMAXに対応したRF系の新製品をピックアップしてまとめてみる。
    図2 三菱電機の「MGFS36E2527」
    図3 NXP Semiconductors社の「UXF23460」
    図4 Analog Devices社の「AD9352/9353」
  • ・三菱電機の高出力増幅器
     三菱電機は、WiMAX端末用の高出力増幅器「MGFS36E2527」を発表した(図2)。増幅用素子としてInGaP HBT(インジウム/ガリウム/リン ヘテロバイポーラトランジスタ)を採用した同製品は、27dBm出力時の歪み特性(EVM:error vector magnitude)を2.5%に抑えている。WiMAXで用いられる変調方式の1つ、OFDM(orthogonal frequency division multiplexing:直交周波数分割多重)に合わせて、素子の構造を最適化したという。
     同製品の対応周波数は2.5GHz〜2.7GHzで利得は32dB、固定WiMAXとモバイルWiMAXの双方に対応している。増幅器出力の状態を検出し、出力をDC電圧に変換する「パワーディテクタ」と、増幅器出力の利得を20dB変更する「1ステップアッテネータ」を内蔵しながら、PCカード端末での利用を意識して、パッケージサイズは4.5mm×4.5mm×1.0mmに抑えた。サンプル価格は1000円で、2006年12月に発売予定だ。同社は、2007年度上期に、3.5GHz/2.3GHz帯対応品も順次製品化するとしている。
  • ・NXP社のトランシーバIC
     オランダのNXP Semiconductors(旧Philips Semiconductors)社は、モバイルWiMAX対応のトランシーバICを発表した(図3)。2.3GHz〜2.4GHz帯向けの「UXF23480」と2.5GHz〜2.7GHz帯向けの「UXF23460」の2製品があり、携帯電話端末、ノート型パソコン、PDA端末、PCカードなどをターゲットとしている。
     両製品とも、BiCMOSプロセスを採用することで、低ノイズ(NFはUXF23480が2.8dB、UXF23460は3.0dB)、高ゲイン(送信ゲインは74dB)を実現している。OFDMA(orthogonal frequency division multiple access:直交周波数分割多元接続)変調方式での送信、受信が、それぞれ133mAと145mAの消費電流で行える(電源電圧は2.8V)。隣接チャンネル除去比(ACR:adjacent channel rejection)は50dBc。アナログI/Qインターフェースを介し、各種ベースバンドLSIに接続することができる。外形寸法は7.0mm×7.0mm×0.85mmで、すでに出荷が可能だという。
  • ・ADI社のトランシーバIC
     米Analog Devices(ADI)社は、WiMAX対応のトランシーバIC「AD9352」と「AD9353」を発表した(図4)。デュアルバンド版のAD9352は2.3GHz〜2.7GHzと4.9GHz〜5.9GHz、シングルバンド版のAD9353は3.3GHz〜3.8GHzの周波数帯をサポートする。
     両製品の特徴は、NXP社の製品と同様のトランシーバ機能に加え、各種アナログ部品を1チップ化している点だ。送受信用の160Mサンプル/秒の12ビットA-Dコンバータ/D-Aコンバータに加え、自動ゲイン制御や送信パワー制御などに用いるA-DコンバータやD-Aコンバータなども内蔵する。このようにアナログ部品を一まとめにすることで、両製品とともに用いるデジタルベースバンドLSIは、90nmや65nmといった微細プロセスで製造することが可能になる。なお、ベースバンドLSIとの接続には、「ADI/Qインターフェース」を用いる。
     両製品ともに現在サンプル出荷中で、量産は2006年12月の予定である。1000個受注時の単価は14.95米ドル(米国における参考価格)からで、9mm×9mmの64端子LFCSPで供給される。
    (飴本 健)

高周波アナログ技術で成否を分けるもの
 TDKは、固定WiMAX/モバイルWiMAXに対応した製品ラインアップを2007年春に量産可能なレベルでそろえていることを明らかにしている。具体的には、アンテナとトランシーバICとの間で使用するダイプレクサ、バンドパスフィルタ、バランを10数品種、開発済みだという。対応する周波数は2.5GHz帯、3.5GHz帯が中心で、2.3GHz〜3.9GHzの範囲をカバーする。
 これらの部品は、LTCC(low temperature cofired ceramic:低温焼成セラミックス)技術を用いて製造する。異なる周波数帯に対応するには、それに応じた部品の設計が必要となる。求められるスペックを満たすためには、誘電率の異なる薄いセラミック基板を何層にも組み合わせて使用する。例えばバンドパスフィルタであれば4〜5個程度の素子で構成することになるが、そのためのセラミック基板の数は20層にも及ぶ。TDKは、材料のレベルからLTCC技術に対応しているため、各層に対して細かい調整を行って製品の特性を実現できるという。
 とはいえ、こうしたアナログ部品の回路設計には、微妙なさじ加減が要求される。もちろん、コンピュータを使った回路シミュレーションをベースとして設計を行うわけだが、設計値と試作品の実力値は必ずしも精度良くマッチしない。当然、カットアンドトライ的な対処も必要になる。言い尽くされてきたことだが、そこで重要になるのは、そうしたミスマッチを解消するためのノウハウの蓄積だ。
 また、焼成セラミックでは、寸法ばらつきを抑えることすら簡単ではない。従って、製造プロセスに起因するばらつきの制御の難易度は高い。そのため、製造上、鍵となる設備は、TDKが自社で開発しているという。
(飴本 健)


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