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2005.12
【WEB限定記事】
電源の新しいデジタル制御方式「PMBus」

 電源のデジタル制御技術が注目を集めている。この技術は、うまく活用すれば消費電力の削減などの大きな効果を期待できるが、単に通信バスを増やすだけの結果に終わる可能性があることも事実である。ここでは、新しいオープンスタンダードプロトコルであるPMBusについて、例を挙げて説明する。
Bob White 米Artesyn Technologies社
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 昨今、デジタルな電源制御の必要性が高まりつつある。多くのボード設計者は中間バスアーキテクチャを取り入れ、複数のオンボードDC-DCコンバータを使用し、異なるシリコンデバイスに必要な様々な電源を設計している。設計、製造テスト、および日常のシステムの使用において、これらの電源の設定、制御、ならびに監視がますます複雑になっていることは明らかだろう。電源オン/オフのシーケンスを制御するだけなら、専用のプログラマブルICと多くの追加部品があれば十分である。だが、柔軟性の高いシステムレベルの制御および解析には、さまざまな設定やリアルタイムフィードバック機能が必要であることは言うまでもない。

 現在、ほとんどのDC-DCコンバータは、シンプルな受動素子が発生するアナログ信号を通して設定、制御されている。最新の電力変換トポロジーを使用した複雑な高機能コンバータでさえ、起動時間、セットポイント値、スイッチング周波数を定義するために、外部のトリミング抵抗とコンデンサを使用している。これらのパラメータの変更はどれも困難である、予測電源制御処理は勿論のこと、適応電源制御処理を実装するのは実質的に不可能な状況である。

 出力電圧制御用にVIDコードの形で制限付きのデジタルプログラマビリティを提供しているマイクロプロセッサ用の特殊コンバータを除いて、市販されているほとんどのブリックバス、中間バスポイントオブロード(POL)コンバータは依然としてアナログ制御ドメインで作動している。
いま、デジタル制御の非絶縁型POLコンバータが必要とされている。非絶縁型POLコンバータは、既にボード上のデバイスへの最終電圧の供給に広範囲に使用されている。しかし、近い将来、設計者がデジタルプログラム可能な電源装置を必要とすることは間違いないからだ。

 今日まで、デジタル電源制御に関して業界全体のコンセンサスがなかった。多くの電源装置メーカーはこの課題に取り組むために、デジタルプログラムが可能なPOLコンバータを発表してきたが、これらのコンバータは特許として登録されたアーキテクチャとシリコンに基づくことから、高い開発コストが掛かり、その埋め合わせのために、顧客を限られたサプライチェーンと限定的なライセンス契約書で縛りつけてしまう。また、ハードウェアもソフトウェアも事実上カスタム品であるため、この技術が他のボードメーカーで使用されることはほとんどない。

そもそもPMBusとは何か?

 PMBusは、オープンスタンダードのデジタル電源制御プロトコルである。トランスポートと物理インターフェイス、およびこれを達成するのに必要なコマンド言語を完全に定義することにより、電源コンバータやその他のデバイスとの通信を容易にしている。いくつかの電源装置メーカーや半導体メーカーが提携して、プロトコルの制定を進めている。完全デジタル電源制御ソリューションの採用を妨げているのは適切な標準がないことによる、と認識したこれらメーカーの努力により、このプロトコルは急速に業界全体で広まりつつある。今年の3月に、プロトコルの改訂1.0が公開された。その所有権は、システム管理インターフェイスフォーラムとして知られる独立の特別利益団体(SIG)に譲渡され、現在この団体が標準の開発と促進を行っている。

 PMBusはAC-DC電源装置またはAC-DCコンバータの標準というわけではない。PMBusはPoint Of Load AllianceやDOSA(Distributed-power Open Standards Alliance)などの業界連合がサービスを行っている外形やピン配置などの属性を特定しないだけでなく、2つの電源装置の間で通信を処理することもない。これらは、半導体メーカーと電源装置メーカーの担当領域である。

低コストでリアルタイム制御を実現

 PMBusトランスポート層は、低コストSMBus(システム管理バス)のバージョン1.1に基づいている。SMBusのバージョン1.1は、業界標準I2Cシリアルバスより堅牢な、パケットエラーチェック機能とホスト通知機能を規定している。I2CバスはもともとオランダPhilips Electronics社がIC間通信用に開発したもので、SMBusは米Intel社がPCとサーバーのシステム管理通信用に定義したものである。SMBusはIntelベースのサーバーで広く使用されており、システム管理用のIPMI(インテリジェント周辺機器管理インターフェイス)の物理層とトランスポート層を提供している。

 SMBusには第3の信号線「SMBALERT」がある。これにより、POLコンバータなどの子機デバイスがシステムホスト/バス親機に割り込むことができる。従来は子機デバイスを常に状態認識するために親機を採用するシステムだったが、それよりも柔軟性が高い。またホストプロセッサへの負荷も少ないため、イベントドリブンの閉ループ制御スキームを容易に実装できる。さらに、PMBusプロトコルは、すべての子機デバイスが、デフォルトの設定データを不揮発性メモリに格納するか、ピンプログラミングを使用することでバス通信なしでパワーアップできるようにするかの指示を出す。その結果、システムの起動時間は市販されている他のデジタル制御システムより大幅に短縮される。(従来のデジタル制御システムは、バス親機がパワーアップ初期化ルーチンの一環としてすべての子機デバイスを設定している。)

 各子機デバイスの物理アドレスは専用ピンを通して定義される。半導体メーカーはトライステートピンやレジスタ値プログラミングなどの新しいアプローチを提供しようとしている。SMBusのクロック、データ、割り込み線に加え、PMBusプロトコルは電力変換デバイスと併用するために2つのハードワイヤード信号も規定している。1つはバス経由で受け取ったコマンドと共に使用して個々の子機デバイスのオン/オフを切り替える制御信号である。もう1つはオプションの「書き込み保護」信号で、メモリに格納したデータの変更を防ぐために使用される。図1は一般的な実装を示す。SMBusはバスのすべてのデバイスの有線AND接続を使用してバスコンテンションを調整しており、電気的にはI2Cバスとよく似ている。

図1 PMBusをベースとしたデジタル電源制御の一般的接続

 他の電源制御アーキテクチャに対するPMBusの大きな利点は、親機デバイスが特許化された回路構成に基づいていない点、および変換プログラムとしても機能しない点である。ホストと電源装置の間のすべての通信は、一貫してバス経由で管理される。これにより、実装コストを抑え、柔軟性の高い制御が実現できる。ホストにはシステムの既存のプロセッサ、低コスト汎用マイクロコントローラ、FPGAのゲートを使用できる。もちろん、ホストは目的によって異なる。例えば、ボード設計段階ではノートPCをホストとして使用できる。製造テストでは自動テスト機器をホストとし、ボードパフォーマンスを包括的に検証し、必要に応じて個々の電力変換デバイスの操作パラメータを変更することで、そのボードの回路に対応できる。最終的なテスト設定値は、子機の不揮発性メモリに格納しておく。

簡単なコマンド言語

 PMBus通信は、簡単なコマンドセットに基づいて行なわれる。すべてのパケットにはアドレスバイトが含まれ、その後にコマンドバイト(0、1、1以上のデータバイト)、オプションのパケットエラーコード(PEC)バイトが続く。図2は、一般的な親機から子機への情報転送を示している。親機は単一の「開始」条件と「停止」条件を使用して転送の始めと終わりを示し、転送先の子機デバイスは単一ビットを使用して各バイトの受信を通知する。応答時間とプロセッサのオーバーヘッドを最小限にするために、子機は「停止」ビットを受信すると直ちにコマンドを処理して実行する。他のバスプロトコルとは異なり、「実行」コマンドを別途待つ必要はない。

図2 標準の親機から子機への通信シーケンス

 プロトコルの1バイトコマンドコード1つで256のコマンドを使用できることになるが、PMBusデバイスがすべてのコマンドをサポートしなければならないという規定はない。多くのデバイスは、コマンドの一部のみを使用して、目的とする動作を実現している。今後の仕様拡張への対応も考慮している。2つのコマンド拡張の条件が規定されており、2バイトコマンドを効率的に設定できる。1つの拡張はPMBusデバイスメーカーが使用するもので、もう1つはプロトコルの今後のバージョンアップ用である。

実装の容易さ

 PMBusプロトコルではコマンドセットが豊富に用意されており、設計者は効率的な電源制御プログラムを作成して、短時間で実装できる。POLコンバータの電圧シーケンスはその良い例である。これまで設計者は、市販されている特定用途向けのコントローラICを使用してきた。プログラムの開発のためにICメーカーが提供するソフトウエアを使用し、ボードの貴重なスペースをそのICに割いてきた。PMBusが直接制御できるコンバータはよりコスト効果が高く柔軟性に富んだソリューションを提供している。製品のライフサイクルのどの段階でも、操作パラメータを変更することで仕様変更に対応できる。

 POLコンバータの起動シーケンスは、2つのPMBusコマンドで制御できる(図3)。Ton_Delayは出力の生成開始までのコンバータの待ち時間をプログラムし、Ton_Riseは出力がゼロから最終的なプログラムされた値まで増加する時間をプログラムする。設計者は、ターンオン遅延時間とターンオン立ち上がり時間で各コンバータの動作をプログラムすればよい。同様に、ターンオフシーケンシングの制御も2つのコマンド(Toff_DelayとToff_Fall)で実行できる。

図3 電源オン/オフのシーケンス

 デジタルプログラムが可能なコンバータを使用すれば、電圧マージンテストにおける設計者やテスト担当者の負担を大幅に軽減できる。既に多くのボードメーカーが、供給電圧変動時におけるICの性能評価にこの技術を使用している。仕様を満たさないデバイスは、テストの過程で除外される。従来、マージンテストは反復の多い時間ががかる作業だった。DC-DCコンバータの出力電圧を代表値の上下数パーセントで調整するために、抵抗値を合わせ込む必要があったのだ。PMBus準拠のPOLコンバータを使用すれば、この作業が容易になる。ここでも、2つのコマンド(VOUT_MARGIN_HIGHとVOUT_MARGIN_LOW)を使用すれば、それぞれのコンバータから出力されるテスト電圧を厳密に制御でき、またボードパフォーマンスも監視できる。これにより、テスト時間を大幅に短縮できるだけでなく、より正確なテスト結果を得られるようになる。

業界全体にわたる承認

 PMBusプロトコルは、成功に向かって着実に進んでいる。このプロトコルは、2004年10月に大手電源装置会社2社(Artesyn Technologies、Astec Power)および6社以上の世界の代表的な半導体メーカーによって提案された。電源装置メーカーからなるPoint Of Load AllianceおよびDOSAも規格を承認し、大手電源メーカーの多くが対応製品を開発中である。

 2005年にもPMBusプロトコルをサポートする製品がいくつか発表されている。米Texas Instruments社、米Intersil社、米Zilker Laboratories社、米Silicon Laboratories社がPMBusに準拠した電源制御LSIを発表し、Artesyn社は顧客のセミナーで使用するためにPMBusデモキット(図参照)、およびPMBus準拠POLコンバータを発売した。今後、より高い統合レベルとより一層のプログラマブル機能のあるその他のPMBus準拠の電力変換製品を発売していく予定である。オープンアーキテクチャ電力変換モジュールと複数のメーカーが製造する関連デバイスを使用して、最新の電源制御処理を実装できる。
 オープンスタンダードのPMBusデジタル電源制御プロトコル、およびSMBusトランスポート層の詳しい情報については、システム管理インターフェースフォーラムのWebサイトwww.powerSIG.comを参照のこと。

図4 Artesyn社のPMBusデモキット

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