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2005年3月号
有機ELディスプレイの
性能と使い方

 
有機EL(OLED)ディスプレイは現在、液晶表示器(LCD)よりも高価だが、消費電力は少なく、画質も美しい。そこに着目し、各パワーコンバーターメーカーも有機ELアプリケーション用のICの製造を開始しつつある。次世代のディスプレイ技術として、有機ELはモノクロからカラーへ、そしてより大型化への道を歩んでいる。。

Joshua Israelsohn
 製造歩留りの向上と製造費用の低減により、有機EL*1)(OLED:Organic Light-Emitting Diode)ディスプレイの使用は着実に増えつつある。それに応じて、半導体メーカー数社は、OEM設計者がディスプレイ・サブシステムの実装をフレキシブルに行える、有機ELおよびLCDバイアス用のパワー変換ICを提供し始めた。厳密には、I Cメーカーはパワーコンバーターを有機EL用に最適化しているわけではないが、これらの素子は有機ELの優れたエネルギー効率を維持し、ディスプレイ市場におけるLCDの位置に取って代わろうとしている。
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   最初に商用に適用されたのは、モノクロの有機ELで、携帯型計測機器や娯楽用機器の小型で低解像度の前面パネルなどであった。製造プロセスが成熟して以来、折りたたみ式携帯電話のサブディスプレイとして成功を収めている。当初、カラーの有機ELは、OEM先のカメラの小型化、高解像度化というトレンドにぴったり合致し、アナログもしくはデジタルビデオカメラのファインダーとしての用途を見出した。これ以降、ディスプレイメーカーは製造プロセスやディスプレイの設計を改善して費用を削減し、性能および堅牢性を向上させてきた。
 電圧制御する半透明シャッターのように振る舞うLCDとは異なり、有機ELは発光体であるためにバックライトを必要としない。現在の有機ELディスプレイは、LCDよりも優れたエネルギー効率、画質、堅牢性および低温時での性能を実現している。当面はLCDよりも高価だが、継続的な歩留り向上と市場への浸透により、価格の差は縮まりつつある。また、米iSuppli社の技術・戦略研究部門のディレクターを務めるKimberly Allen氏は、「米Kodak社独自の有機EL技術の特許が、失効し始めている」と指摘している。有機ELベンダーがそれに関連して負担してきたライセンス料も、同様に期限切れとなる。これに対しLCDメーカーは、画質や効率は有機ELディスプレイに譲るものの、価格差は引き続きLCDに有利であり続けると応じている。


マイクロワットでミリワットを駆動

 すべての有機ELディスプレイが、同じように作られているわけではない。というのは、電源の要求条件によって異なるからだ。ディスプレイには2つの基本的構造、つまりパッシブ(受動型)マトリックスとアクティブ(能動型)マトリックスがある(p.62囲み記事「有機ELディスプレイのマトリックス方式」参照)。「素材は似ているが、私たちは、PMOLED(パッシブマトリックス式有機EL)を高電流で駆動し電圧降下を大きくさせている。PMOLEDは最大でも20Vまでしか必要としない。またAMOLED(アクティブマトリックス式有機EL)では、少量の電流で駆動できるため10V未満で済む。また電流は、PMOLEDディプレイでは、カラムあたり数十μAから数百μAの範囲であり、AMOLEDではカラムあたり数μAから数十μA程度である」と、伊仏合弁のSTMicroelectronics社のプロダクトライン・マネジャーのJoel Roibet氏は述べる。
 電源設計の見通しを複雑にしているのは、「携帯電話やデジタルカメラ、そのほかの携帯機器に採用されている多くのアクティブマトリックス型LCDや有機ELは、正および負の低電流バイアス電源を必要としているからだ」と、米Advanced Analogic Technologies社の副社長であるJan Nilsson氏は述べている。同社の「AAT3190」は、通常1MHzのスイッチング周波数で動作する自己クロック方式のデュアルチャージポンプ・アーキテクチャーを使い、ワンチップで正と負両方の電源を生成することで、先の要求に対応している(図1)。チャージポンプは、2.7V〜5.5Vの単極性の入力電圧から、最大±25Vの調整可能な出力を生む。
 電圧コンバーターは、小型の携帯機器ではよく基板の高さ制限が問題となるインダクターを必要としない。その代わり、それぞれのチャージポンプは外付けのダイオードとコンデンサーからなるマルチプライヤー回路を駆動する。マルチプライヤー回路をカスケード接続することによって、出力電圧を拡張できる。各出力の外付けの抵抗分配器は、コンバーターにフィードバック信号を供給する。フィードバックされた安定化電圧の誤差は、正極側で50mVつまり約4%であり、負極側で100mVである。ICのチャージポンプ駆動端子は200mA(最大絶対定格)をそれぞれ出力可能で、Advanced Analogic Technologies社のこの部品は、効率性と40mAまでの負荷レギュレーションを特徴としている。2つの駆動端子でそれぞれの極性の全マルチプライヤー段を駆動するので、カスケード接続されたマルチプライヤー回路が出力する負荷電流はマルチプライヤー回路の段数に反比例する。
 Advanced Analogic Technologies社のAAT3190はソフトスタートで低電圧ロックアウト付き。さらにコンバーターの静止電流を最大800μAから、わずか1μAに減少させるシャットダウン・モードを備えている。同製品の1000個購入時の単価は、1.73米ドルである。8端子のMSOPおよび12端子のTSOPパッケージで提供されている。


有機ELを後押しするさまざまな企業

 ユニポーラ・ディスプレイの応用機器向けとして、米Fairchild Semiconductor社は、ブーストコンバーター「FAN5331」を提供している。AAT3190と同様、FAN5331は1.6MHzと高速なスイッチング周波数で動作し、外付けのリアクタンス部品は小型化されている。その結果、ブーストトポロジーでは、インダクターを必要とするが、このコンバーターでは10mHのものでよい。小型の5端子SOT23パッケージを採用し、外付け部品も比較的少ないため、ディスプレイの電源を小型化できる。FAN5331は、全入力範囲において、15V(定常状態)で35mA(最小)を出力する。同様の動作条件で3.2V以上を入力すると、電流容量は50mAまで上昇する。コンバーターの低抵抗出力スイッチにより、1Aのピーク電流を出力することが可能である。サイクルごとの電流制限モニターにより、ピーク出力電流はこの制限値内であることを保証している。
 同製品の1000個購入時の単価は50セント。シャットダウン・モード時の電流は2μAである。抵抗分配器によって出力電圧を、入力電圧とコンバーターの最大電圧である20Vの間に設定できる。定格1.23Vのフィードバック電圧は、25mVの誤差を持つ。
 従来の低速のクロック速度では、レイアウトや機構設計上の課題となる大型の磁性体を必要とするのに対し、高速のクロック速度とそれに対応した小型のインダクターは、薄型の携帯機器のためのブーストコンバーターの方向性を表している。これらの課題があるにもかかわらず、小型電源の設計者は長い間、ブーストコンバーターの性能のメリットを正当に評価してきた。米Linear Technology社の設計技術者であるEddy Wells氏が指摘するように、従来のブーストコンバーターはより効率的な動作と、より広範囲の昇圧比を実現してきた。一方、ブーストコンバーターの電源では一般にスペースを取り、突入電流や短絡回路保護などのシステムの問題を外付け回路の付加によって解決してきた。
 Linear Technology社の「LTC3459」は、これらの問題に応える一連のブーストコンバーターを具現化したものである。LTC3459は、少ない負荷電流でコンバーターの効率を維持するバーストモードを備え、さらに突入電流制限や短絡回路保護、シャットダウン時の負荷の切り離しなどの機能を持つ。機能が豊富であるにもかかわらず、一般的な回路では、スイッチング回路には、コンデンサー3個、抵抗2個、それにブーストインダクター1個が必要なだけである(図2)。Wells氏は「およそ75mAという低いピーク電流で動作し、0805サイズの小型インダクターが、内蔵チャージポンプと同様、実装面積の削減に役立っている」と語る。
 このICは6端子のSOT23パッケージで、1.5V〜5.5Vの入力電圧で動作し、アクティブマトリックス式有機ELディスプレイに適した2.5V〜10Vまでの出力電圧を供給する。固定クロック周波数で動作するそのほかの低電力コンバーターとは異なり、LTC3459は入力と出力の差によって、スイッチング周波数を0.6MHz〜2.6MHzの間で自己調整する。フィードバック基準電圧は1.22Vで誤差は30mVである。
 1000個購入時の単価は1.95米ドル。コンバーターの最大静止電流は20μAである。素子がシャットダウン・モードに入ると、残留動作電流は1μA未満に減少する。
 米Maxim Integrated Products社の「MAX8570」は、5タイプある有機ELディスプレイやLCDを含む低電流アプリケーション用ブーストコンバーターの1つである。MAX8570は、出力電圧が調整可能であり、出力1.8Vで5mAまで負荷電流を流せる。また、「MAX8571」と「MAX8573」が15mAまで、「MAX8574」と「MAX8575」が25mAまでとなっている。これらは、3種類の大電流に対して調整可能な出力と、15V固定出力のモデルを提供している。ブーストコントローラーは、2.7Vから5.5Vまでの入力電源で動作し、調整可能なモデルでは、電圧を3Vから28Vまで出力できる。基準電圧誤差は19mVである。「MAX857x」ファミリーのコンバーターは、ソフトスタート、低電圧ロックアウト、および電流制限といった機能を提供している。シャットダウン端子により、素子の静止電流は50μAから1μAに減少する。同製品の1000個購入時の単価は1.25米ドルで、6端子SOT23パッケージで提供される。


アクティブ方式が主流になる?

 適用するものによるが、Maxim Integrated Products社、Linear Technology社およびFairchild Semiconductor社が提供する3つのブーストコンバーターを比較すると、統合化のレベルに対する微妙なメリットの違いが明らかになる。そして、概念的にはブーストコンバーターのような単純な製品でさえも、トポロジーに対する最良のアプローチは存在しないことを示している。LTC3459は、4Ωオーダーのチャンネル抵抗を持つオンチップPMOS素子であり、その出力はブーストインダクターから切り離される。結果として、アプリケーション回路は、多くのブーストコンバーター回路において一般的なショットキー・ダイオードは使用しない。そのため、レイアウト面積と使用部品、製造費用をわずかだが削減できる。
 Fairchild Semiconductor社のFAN5331とMaxim Integrated Products社のMAX8570とそのファミリーは、外付けのショットキー・ダイオードを使用している。そのため、400mVオーダーの接合電圧に負荷がかかり、数Ωのフォワード抵抗が増加する。しかしながら、Maxim Integrated Products社がアプリケーション回路の一例として示すように、外付けのショットキー・ダイオードの利点は、使用するICの外にスイッチング波形を取り出し、粗調整の負極性電源をチャージアップするためなどに使用できる(図3)
 米Texas Instruments社のブースト・コントローラー/インバーター「TPS65130」は、2.7V〜5.5Vの入力電圧範囲で±15Vを出力する。制御トポロジーは、1.25MHzの固定周波数PWMスイッチング信号を使用。低電力モードでは、パルス・スキッピング機能により、軽負荷電流を供給する。TPS65130のシャット・ダウンモード時には、コンバーターの静止電流500μAは1.5μAに下がる。同製品の1000個購入時の単価は2.95米ドル。この素子は、ほかの素子よりも端子数が多い24端子のQFNパッケージで提供される。これにより、通電シーケンスを制御するための、正極側と負極側がそれぞれ独立したイネーブル入力端子などを追加している。外付けのPMOS素子を制御するための出力信号は、ブースト回路から電池を切り離すことができる。しかしながら、外付けPMOS素子に加えて、アプリケーション回路には2個のインダクターと2個のショットキー・ダイオード、5個の抵抗および8個のコンデンサーが必要となる。これらの外付け部品は、特に低電力の単一出力ブーストコンバーターと比較すると多いように感じるが、部品点数はデュアルチャージポンプ用と同じである。
 ディスプレイマーケットにおいて、有機ELディスプレイがより強い位置をしめるにつれて、有機EL用の多様なパワーコンバーターは、現在の性能や機能を拡張し続けることは必至である。「有機ELディスプレイ市場は、モノクロからカラーへの移行で急速に成長し、2006年には10億米ドル規模になると見込まれる」と、iSuppli社のAllen氏は予測する。カラーへの移行に加え、パッシブマトリックス式ディスプレイよりも、大画面をサポートするアクティブマトリックス式有機ELへと向かう傾向が明らかになっている。


この記事に出てくる製品に関する詳しい情報を希望する場合は、直接以下のメーカーにお問い合わせください。

Advanced Analogic Technologies社
http://www.analogictech.com/
Fairchild Semiconductor社
http://www.fairchildsemi.com
iSuppli社
http://www.isuppli.com
Linear Technology社
http://www.linear.com
Maxim Integrated Products社
http://www.maxim-ic.com
STMicroelectronics社
http://www.st.com
Texas Instruments社
http://www.ti.com  
有機ELディスプレイのマトリックス方式
 
 有機ELディスプレイのピクセルアレイを形成する基本的な方法には、パッシブマトリックス式(PMOLED)とアクティブマトリックス式(AMOLED)がある。これらの2つの方式は、LED構造(図A)はほぼ共通だが、各セルのアドレス指定方法が異なる。電子はカソードからアノードに流れ、正孔は逆の流れとなる。再結合により、有機発光材層でフォトンを放出する。従って、出力される光は光学損失を除いて電流に比例する。
 
2種類の有機ELの違い
 
 このようなピクセル構造の利点は、LCDなどをはじめとするほかの薄型ディスプレイ技術と比較するとよく分かる。LCDはバックライトを必要とし、シャッターのようなピクセルを使用してディスプレイの光の透過を部分的に調節する。エネルギーの観点からすれば、この手法はアクセルを一杯に踏み込み、ブレーキでスピードを調整するようなものである。一方、有機ELは画像を形成するために必要な光を生成する。これは、望むスピードを実現する分だけ、エンジンスロットルを開けることと似ている。有機ELとLCDのバックライトは、同じ効率でフォトンを生成するわけではない。しかしながら、LCDのバックライトが放出する多くのフォトンは、外には出て行かない。従って、有機ELディスプレイのほうが全体のエネルギー効率は高くなる。
 2種類ある有機ELディスプレイの違いは、ピクセルをどうアドレス指定するかだ。パッシブ型ディスプレイでは、列(ロウ)と行(カラム)の導線でマトリックスを形成する。製造過程では、各交差個所においてマトリックス導線の間隔で有機EL構造を形成する。ディスプレイ・コントローラーが列の導線をスキャンするときに、点灯ピクセルを含む行の導線に電流が流れる。しかしながら、ピクセルはコントローラーがその列の導線をアドレスしている間だけしか点灯しない。つまり、電流のデューティーサイクルは列の導線の数に反比例し、ピーク電流は同じ導線の数に正比例する。私たちが感じる明るさは、電流がフレーム間隔全体に行き渡る時間積分に比例する。次のフレームに移る間に、コントローラーはピクセルをリフレッシュするが、見ている人に画像が持続しているような印象を与える。

アクティブ方式のメリット
 
 アクティブマトリックス式有機EL(AMOLED)は、各ピクセルにTFT(薄膜トランジスタ)を使用し、フレームとフレームの間の時間だけ駆動信号を保持する。コントローラーは、PMOLEDの場合と同様、列の導線をスキャンするがリフレッシュの間、持続しているゲート駆動電圧でピクセルをプログラムする。TFTピクセル制御は、OLED電流を設定、維持する。ピーク電流や平均電流は、フレームを通じて同じである。AMOLEDの電流は、n列のPMOLEDの電流の1/nなので、カソードやアノードおよびマトリックスにおける抵抗性損失は、ほぼ比例して減少する。
 エネルギー効率の向上だけがAMOLED構造のメリットではない。大型ディスプレイでのデューティーサイクルを短縮するため、PMOLEDではおよそ200本の列に制限される。この数字は正確なものでも確定値でもない。プロセス技術の向上と発光ポリマーの化学的特性の改善により、増加する可能性がある。しかし、現在どのプロセスと化学的特性でも、現実的な列の最大数は限られている。アクティブマトリックス式素子はこのような制限がない。製造上の不良やコントローラーの能力によって制限はされるものの、多くのメーカーでは、大型ディスプレイへの採用が期待されている。
 AMOLDのそのほかのメリットは、ピーク電流対平均電流の比がPMOLEDのピクセルではn対1であるのに対し単一であることだ。この違いは電流密度に比例する経時効果に関係してくる。
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用語解説 / 会社情報
*1)
以前はOrganic Electro Luminescenceと呼ばれていたが、近年OLEDと呼ぶようになってきたため、本誌ではOLEDを有機ELと統一して表記した。
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